いや違う。そんなことを言っている場合ではない。雄鯉は思い直した。
みづりがこのまま雄鯉の部屋に泊まるとして、明日は一緒に学校に行き、放課後はそれぞれの家に帰るだろう。つまり、少なくとも明日の登校までみづりを危険に晒さないように気を付ける必要があるというわけだ。
あの透明女が雄鯉の部屋を突き止めて襲ってきたり、通学途中に待ち受けていたりすると決まったわけではない。しかし、あれだけの喧嘩をしたのである。もう向かってこないと考えるのは虫がよすぎる。油断するわけには行かないだろう。
――明日の登校は、いつもと違う道を使うか。浮橋さんには何とか言って誤魔化して……
立ち上がり、キッチンの流しで歯を磨きながらそんなことを考えていると。みづりが戻ってきた。
「遅いよ! 雄鯉君」
「えっ? 何が……?」
「私もう上がっちゃったよ?」
寝間着姿のみづりは、何故か不機嫌になっている。雄鯉は訳も分からずに宥めにかかった。
「ご、ごめん。ちょっと考えごとしてて……」
「まあ、今日はしょうがないよね。雄鯉君怪我してるし……」
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