案内された宝物庫に整然と並べられた、呪具、魔術具の数々に、ナリナは瞠目した。
今の世で、これほどのコレクションを維持するのは並大抵のことではない。
「小化幻燈、時列操呪布、石礫帽まであるのか…」
聖遺物と呼ばれ、現代では魔女の里からも失われて久しい呪具の数々に、ナリナは手を触れるのをためらった。
「どうぞ、お手にとってごらんください。黒の魔女様にゆかりの品もあるやもしれませんね」
にこにこと上機嫌な様子で、心底いとおしげに収集物を愛撫するアルヘンティナの姿を見るうちに、ナリナはふとある考えに到った。
「…あの男」
彼女は小さな金細工の装飾品を手にとりながら、呟くように言った。
「妙な気配だ。ただの人間ではない。しかし、吸血鬼やゴーレムの類にも見えない」
「レブのことでしたら、いずれ、おわかりになります」
「あいつも、お前のコレクションのひとつというわけか?」
さぐるようなナリナの視線に、彼女は静かに目を伏せ…すぐに、見つめ返した。
「…最初は、そうだったかもしれませんね」
アルヘンティナはそういって、謎めいた、魔女らしい笑みを浮かべた。
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