薬草集め 1
「アロール! 良かった、無事か!」
男は斜面の勢いをほとんど殺すことなく駆け下り、アロールに駆け寄ってくる。そしてそのままの勢いで地面に座り込むアロールに飛びついた。
「いてて、ちょっと落ち着けって」
大げさに痛がるアロールの様子に気付くと、彼はすぐに手を離した。
「すまん! だが目の前から突然消えてしまえば、慌てもするさ」
薬草集めのために山へと入った2人だったが、足を踏み外した彼女が男の前で転げ落ちていったのだ。
「そりゃあ悪かったな、ジョシュア。……痛みはあるが気分は悪くねぇ、出血も無さそうだな」
アロールは自らの体を触ったり動かしたりして確かめると、男にそう伝えた。ジョシュアの目にも引っ掻き傷や打ち身はあれど、重大な怪我をしてるようには見えない。
「そうか……とりあえず上に戻ろう。ほら、さっさと乗れ!」
そういうと男は彼女の前に座って、自らの背中を示した。
「大丈夫だ! と言いたいところだが、流石に無理は出来ねぇ。……悪いな」
それに対して彼女は素直に男に背中に身を任せた。
「気にすんな、よっ! と。それじゃあ、どうにか行きますかね」
麻の服の上からじゃ判り難かったが、意外と肉付きのいいアロールの感触にジョシュアは表向き反応を示さない。
だが斜面を四つん這いで登る男のズボンは勃起を隠しきれなかった。
彼に荷籠ごと背負われる彼女は気づくことはなかったが、わずかに不自然な動きがあった。
だが自分を助けるために斜面を駆け下りた時に痛めたのだろうと、アロールもそこまで気にしなかった。
それからしばらく、ジョシュアは斜面を登り続けた。
太陽が中天を過ぎて随分と経つが、彼女を背負うジョシュアには徐々に疲労の色が見え始めている。
しかし彼は弱音を吐くことなく、黙々と斜面を登り続けた。自らのズボンが不自然に突っ張っているのを彼女に悟られないよう、細心の注意を払いながら。
だが、地面にラッパのような花弁を持つ奇妙な花が群生しているのには気付くことが出来なかった。
それはジョシュアのズボンの突っ張っている箇所が触れた途端に吸い付くように閉じてしまった。
「ああ!」
突然の吸引の刺激にジョシュアが声をあげてバランスを崩しかける。崖にしがみついてどうにか滑落は防げたが、背負っていたアロールはかなり下まで落ちてしまっていた。
「どうした、ジョシュア!」
アロールがその異変に気づいた時には、既にジョシュアの体は奇妙な花に捕らえられてしまっていた。
「花、か! おい、このっ! 離れろ!」
彼女の目に映るのは遥かに上の方にしがみついているジョシュアが必死に花を引きちぎろうとしている姿だった。
それは彼のズボンに吸い付いたままびくともしない。それどころか更に強く吸い付き始める始末だ。
最初は亀頭の先端にくっついているだけだったそれはじわじわと陰茎を包んでいく。アロールのように落ちて逃れようともしたが、更には両手両足にまでも吸い付いていてしまい崖から離れる事すら出来なくなっていた。