「……なんか、色んな事、全部」
美規は不機嫌そうな表情で、ポツリと言う。
「来なよ。いい場所あるからさ」
美規は購買部の横にある自販機で紙パックジュースを買い、校舎の奥にある非常口の扉を開けた。
そこは学校の裏手が一望できる場所だった。広い空と裏山が広がる。
「いい場所だろ?」
ピンクの紙パックジュースを憐に渡すと、美規はもう一つの紙パックにストローを刺して飲み始める。
憐もそれに倣うように、渡されたジュースに口をつける。
「……美味しいね」
甘いイチゴの味が広がる。
「……だよな」
憐は頭上に広がる青空を見上げた。
「空が、広い………」
「うん……」
風が吹いて木々がざわめく。虫の声。鳥の羽ばたき。
流れていく白い雲。
(あの雲は、どこに流れていくの……)
「遠いね……」
「……案外近いかもよ」
「なら、いいね」
憐の呟きに美規は答えながら、二人は空を眺めて過ごした。美規は何かを聞こうとはしなかった。
憐は隣にいる美規が遠くなったような気がしていた。ついさっき、教室でセックスしていたのに。それが夢のように思えてくる。
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