夜明け前の街道は冷たい霧に包まれ、灯籠の淡い光が道筋を浮かび上がらせていた。その静寂を裂くように、二人の男が駕籠を担ぎ、全力で駆けていた。
先頭を行く男は、背中から肩にかけて盛り上がった筋肉をさらけ出していた。身につけているのは白い褌と腰に巻かれた茶色い毛皮だけで、ほとんど裸同然。濃い胸毛の間を汗が滝のように流れ、月明かりがその濡れた肌を照らして輝かせている。後ろを担ぐ男も同様にほぼ裸。逞しい腕が駕籠の横棒を力強く握りしめ、太腿の筋肉が道の傾斜に合わせて躍動していた。彼らの息は荒く、汗の雫が足元の石畳を濡らしていく。
「頼む! 急いでくれ!」
駕籠の中から男の声が響いた。依頼主は若い男で、何か重大なことを抱えている様子だったが、駕籠かきの男たちは一切振り返ることもせず、ただ前を見据えて走り続けた。
彼らにとっての仕事は、運ぶべきものをただ無事に目的地へ届けること。それ以外に余計な感情は不要だった。
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