僕の指先が褌の結び目を掴む。汗で滑る指が、ほんの少しだけ震えているのを感じた。
頭の奥では「やめろ」と叫ぶ声が響いているのに、体は太鼓の音に支配されていた。
音が、振動が、そして周囲の少年たちの熱気が、僕の意思を上書きしていく。
「ヒロ…」
カズキが再び名前を呼ぶ。その声は耳元で風のように優しく、けれど命令のように重かった。僕の中の理性が薄れていき、代わりに原始的な衝動が体の奥から湧き上がる。
僕はそっと褌の端を引っ張った。
月明かりの中、褌が完全に外れて床に落ちると、部屋の空気が一瞬凍りついたように感じられた。
しかしそれは次の瞬間には、爆発するような歓声と太鼓の轟音によって掻き消された。
僕を囲む彼らの視線はもう人間のものではないように思えた。 歓喜とも興奮とも取れるその眼差しが、僕の裸の体を余すことなく貫いている。
汗が頬を伝い、胸を流れ落ちていくのを感じる。
体中が熱い。羞恥心も恐怖もどこかに消え、太鼓の音だけが全てを支配している。
僕はその場で静かに立ち尽くしながら、自分の体が何か大きな力に取り込まれていくのを感じていた。
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