だがその瞬間、怪物がわずかに動いた。波打つ黒い体表が鈍く光り、まるで彼の動きを観察しているようだった。
そして、その「口」と思われる禍々しい裂け目から、ぬらついた何かがゆっくりと伸び出てきた。
それは舌のようだった。ぬらぬらと光る黒い舌が、タケハルの引き締まった体を優しく撫でるように動き始めた。その動きは恐ろしく緩慢で、どこか慎重ですらあった。
まるで何かを確かめるかのように、舌は彼の肌を滑り、隅々まで味わうように動き回った。
少年はその光景に息を呑んだ。舌が動くたび、タケハルの小さな体が震える。それは寒さのせいだけではないようだった。
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