「今日も風が強そうだな」
牛頭がぽつりとつぶやいた。馬頭は視線を上げ、遠くの空を眺める。
「そうだな、あそこの旗が揺れてる」
馬頭が応じる声は低く響き、周囲の雑音を押しのけるように静かに広がる。
二人が話す内容はいつも些細なことだ。空の色、風の匂い、鳥の鳴き声――そんな誰も気に留めないことが彼らの会話の中心だ。それでも、不思議とそのやり取りには重みがあった。まるで、二人の存在そのものが街の秩序を保つ何かに繋がっているような感覚を、周囲の人々に与えていた。
「そろそろ行くか」
牛頭が立ち上がると、ベンチがぎしりと音を立てた。馬頭はそれに続き、無言で頷く。
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