交差 1
「ねぇ?」
最近、入社した俺は30にもなって新入社員。
しかも、なぜか毎日ランチを社長と秘書室長と食べている。
今日も俺の隣には社長がいて…
しかし、向かいにいるはずの室長は、いない。
三角形座りなんですよ、いわゆる。
「あのさぁ…しようよ。したくなっちゃった。直人と」
社長である¨詩織¨から出た言葉に俺は飲んでた珈琲を吹き出した。
「汚いなぁ」
俺だって吹き出すつもりなんてありゃしない。
なんて言った?今。
サラッと。
「ビックリするわ!冗談もいきなりだと」
テーブルの上と、口の周りを拭いてると、
「だって、したいなって思っちゃったからさ」
まだ言うか?
「ねぇ?してみない?」
顎を手に乗せて、こっちに寄って見つめてきてるけど…
社長だぞ?
俺だって男だ。
ナメられちゃいられない。
思いきり顔を作って、近づけて
「どうして今日なんだよ?アイツがいないから?」
向かいの空席に視線を落とす。
その視線を追いながら、
「別に、そんなんじゃないけど…なに?いる時に言った方が良かった?じゃあ、帰ってきたら言うね?」
ニッコリと言うが、意地悪な笑顔だ。
「そんなんじゃなくてさ。巻き込まれんのが嫌なだけ」
詩織と空席の優紀。
社長と秘書室長。
こいつらの関係は、いろいろ聞いたが、どれも噂で実際はどうなんだか毎日一緒にランチしてるだけじゃわからない。
ただ、室長の目線は非情に厳しく感じるが。
「巻き込まれるって何?何かあるみたいじゃない?あれ?優紀と私付き合ってるって思ってる?ないない!ないって」
笑いだしやがった。
「へぇ…そっかぁ」
なにが¨そっかぁ¨なんだよ?
「ライバル視?」
笑いながら、とんでもない言葉を出してきやがる。
「そうじゃないだろ!」
「違うの?じゃあ…直人は私のこと嫌いなの?」
笑いを消して、さらに顔を近づけてきやがった。
「社長ですから。あくまでも」
「答えになってない。つまんないなぁ」
どんな答えを待ってんだ!
「社長は、室長と付き合ってるって、公認でしょ?」
背中を椅子の背あてにあて、こっちをつまらなそうに見ているが、知ったこっちゃない。
「公認ねぇ…じゃあ…ココだけの秘密ね?」
別にいいよ、秘密って聞きたいって言ってないし。
「優紀は、私の兄ちゃんの友達でね。あんなんだけど、昔はすっごい不良だったんだよ?」
へぇ…意外だな。
超エリートって感じなんですけどね、今の室長。
「いっつも怒られてたんだよ、2人。でもなんかいきなり勉強始めて、有名な大学まで入っちゃって。ビックリしちゃった。しかも入社したのが、ウチの会社。で私が会社作ったら、こっちに来たいって言い出しちゃうし」
そりゃ……社長への愛だろが…たぶん。
わかってやれよ、気持ちをさ。
「優紀って、昔からすっごいモテるの」
彼氏自慢ですか?
まあ、聞きますけどね。