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異端児カラス
【学園物 官能小説】

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あんぱん-2



目当ての惣菜系のパンは既に売切れ、籠の中には甘い菓子パンしか残っていない。


私はとりあえず目の前にあった潰れたあんぱんと牛乳をなんとかゲットして、屋上に向かった。


お昼に甘いパンは気が進まないが、まぁしょうがない。




屋上の重い鉄製の扉を押すと、そこには気持ちのいい風が吹きわたっていた。


教室にいるときは気がつかなかったけれど、空には赤とんぼがたくさん飛んでいて、季節が少しづつ移り変わっていることを告げている。


屋上の中でもグラウンドが一番よく見渡せる、お気に入りのスペースに向かおうとして、私は足を止めた。


しばらく屋上に来ていなかったせいか、そこにはすでに先客がいたのだ。


昼休みの屋上にもなんとなく勢力地図みたいなものがあって、あの場所はヤナか私が座る場所だという暗黙のルールがあったのに、数ヶ月で地図が塗り替えられたらしい。


私の指定席だったはずの場所には、カップルらしい男女がこちらに背中を向けて座っていた。


まだ付き合い出して日が浅いのか、微妙に距離をあけて腰かけ、ちょっと遠慮しあっている感じが初々しい。



まぁしょうがないか……
時代は移り変わってるってことで………。



ちょっぴり落胆しながらも自分で自分を納得させ、次なる指定席である中庭の芝生に移動しようと踵をかえした時、カップルの男の子が大きな声を出した。


「あ、シイタケはいってるっ」


――あれ?………この声……


「好き嫌いダメですよ。ちゃんと食べてください」


女の子の口調から察するに彼女のほうが年下らしい。幼い感じのする、キャンディーみたいに甘い声だ。


「わざわざ嫌いな食べ物聞いたのはこういう嫌がらせをするためかよ」


ふて腐れながらピンクの弁当箱を覗き込むその横顔を見て、私は心臓が止まりそうになった。


―――ヤナ?


私は慌てて鉄の扉の陰に隠れた。


「いいから食べてみて下さいよ。食べやすいように工夫してきたんですから」


キャンディーボイスの言葉遣いはとても丁寧だが、まるで母親のような貫禄がある。


「絶対にやだ」


いつもは大人っぽいヤナが急に子供みたいに駄々をこねたので私はびっくりして噴き出しそうになってしまった。


あのヤナがシイタケ食べれないだって―――しかも食べるの「絶対にやだ」だって―――!



悪趣味だとは思いながら、二人の会話がもっと聞きたくて、私は声を潜めてじっとしていた。


あの女の子は誰なんだろう?
あの子もヤナのセフレの一人なんだろうか?


「じゃあ私が食べさせてあげますっ!はい、あーん……」


「えっ……い…いいよっ……」


「誰も見てませんから大丈夫です。はい、あーん……」


我慢が出来なくなって扉の陰からちらっと覗くと、赤い顔をしたヤナが女の子にシイタケを「あーん」で無理矢理口に入れられたところだった。





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