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異端児カラス
【学園物 官能小説】

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あんぱん-1




私はお昼休みが嫌いだ。


お昼休みには「弁当」という厄介な代物を食べなければならない。


別に食べることが嫌いとか、弁当の中身がどうとか、そういうことではなくて―――






授業終了のチャイムとともにガタガタと机を動かし始める女子。


「いつも来てもらってごめーん。今日はアタシがそっち行くから〜」


とかなんとか言いながら、弁当を乗せた机をズルズル引きずって教室の一角に自分たちの「巣」をつくるフラミンゴたち。


これから食事だというのに、わざわざホコリをたてて群れたがる彼女たちの神経が私にはわからない。


そこまでして群れるわりには、会話の中身は呆気にとられるほどからっぽで、


「髪、切ったんだぁ」
「そうなんだけど切りすぎちゃってさぁ。この前髪ありえなくない?」
「そぉんなことないよ。全然フツーにかわいいじゃん」


なんて、聞いてるだけで疲れるような話を、休み時間が終わるまで延々と繰り広げている。


なんでお互い変な気を使いあってでも群れたがるのか……そんなくらいなら一人で食べたほうがよほど快適だと思うのだが。



更に面倒臭いことに、フラミンゴたちは、群れから離れて一人気楽に弁当を食べているカラスのことを決して放っておいてはくれないのだ。


「相原さん、なんで一人で食べてるの?」
「相原さん、よかったら今日からあたしたちと一緒に食べない?」
「相原さんよかったね。一人で食べずにすんで」


だあああああっ!!
面倒臭いっ!


私は弁当ぐらい誰にも気を使わず一人で食べたいのだ。
お願いだから親切面して寄って来ないでほしい。


その点、男の子は自由でうらやましい。


一人で食べている子もたくさんいるし、妙な同情をかけられるうっとおしさもない。


ヤマトの周りには相変わらず毎日入れ代わりで誰かが集まっているけれど、女子の群れのようなネチネチした感じがなくて羨ましいと思う。


私はやっぱりいつまでたっても群れることが苦手だ。






「博美。今日お昼どうすんの?」


しずがお弁当と椅子を持って私の席までやってきた。


しずはクラスの女子の中では一番よくしゃべるほうだ。


面倒見がいい姐御肌の性格で、放っておいたらどこまでも孤立しそうなタイプの私を、いつも何かと気にかけてくれる。


どことなくヤマトに雰囲気が似ているせいか、私も彼女といる時はあまり違和感を感じないでいられるのだ。


しずがいなかったら私はクラスで本当に浮いた存在になってしまうだろう。


「……あぁ。私今日寝坊しちゃって、お弁当作ってきてないの。購買部でパン買って外で食べるよ」


「そっか。了解」


ニコッとこだわりのない笑顔を浮かべて、しずはいつもの群れに帰って行った。


しずのこういうサッパリしたところが私は好きだ。

以前の私は、群れを作る女の子はみんな同じに見えていた。


けれど最近は、そんな中でも自分と気の合いそうな個性を持った人を、冷静に見つけられるようになった気がする。


お弁当の匂いが広がり始めた教室を出て、私は購買部に向かった。



「ヤナに頼んどけばよかったなぁ」



購買部は人気のあるパンはすぐに売切れるから、ぼんやりしていると目当てのパンがほとんど買えない。


以前は、私がお弁当を持ってこなかった日は、よくヤナが私のぶんのパンを一緒に買ってくれた。


ヤナは一人暮しだから、お昼は毎日購買部のパンを買う。


購買部のお姉さんに不思議と顔が利くヤナは、ちゃっかり自分の好きなパンをキープしてもらっているのだ。


まぁどんな手を使ってそういう特別なことが出来るようになったのかは、ヤナとお姉さんの意味深な視線を見ていれば、だいたい想像はつくけれど―――。




ここ最近はヤナとも少し距離をおいているから、前みたいに気安くパンを頼むこともなくなっていた。


「サンドイッチは残ってないだろうな」


購買部は案の定ひどい人だかりだった。






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