異端児カラス-5
「……お前と叔父さんの関係がどんなんで、いつから続いてたか……雪乃が事細かに説明してくれたわ……」
ヤマトの口から「叔父」という言葉を聞く度に心臓がキリキリと音をたてる。
その先にどんな結論が待っているのか聞いてしまうのが怖くて、私は無意識のうちに身を縮めていた。
「女ならいっぱいいるのに、わざわざ相原を選ぶことないって……言われた」
胸が張り裂けそうに痛い。
苦しくて耳を塞ぎたくなる。
「せやから……俺……言うたんや……」
もう止めて――――。
聞きたくないよ。
「……『相原の代わりなんかおらへん』って………」
突然、時間が止まった気がした。
……何?……今何て言ったの?
「……それ…どういう意味?」
「……あんなことぐらいで、俺の気持ちは変わらへんよ」
力強いヤマトの言葉に胸が熱く震えた。
「……って言っても、相原と出会う前の俺なら……そうは思われへんかったと思うけどな……」
少し照れ臭そうなヤマトの声。
「……それで……雪乃さんは……?」
私の問いにヤマトは一瞬沈黙し、苦しそうに深いため息を吐いた。
「俺が相原のこと本気やってわかったら……雪乃のヤツ……めちゃくちゃ泣きよってん……
俺な……雪乃が俺に執着するんは、自分のプライドを傷つけられた復讐のためやと思てたんや。
俺……今まで雪乃の気持ち、何も考えようとしてへんかってん……ほんま最低の男やった……」
私の脳裏に、自信に満ち溢れた美しい雪乃の姿が浮かんだ。
ヤナの話では、ヤマトと新しい彼女を別れさせるために、雪乃は自分の身体を報酬にしてまで、取り巻き連中を動かしていたという。
そこまで自分を犠牲にするほどに、雪乃はヤマトのことが好きだったのだ。
もがけばもがくほど離れていくヤマトの心をどうすることも出来なかった、不器用な雪乃の気持ちを想像すると、胸が苦しくなった。
「雪乃は、俺がええ加減な恋愛を繰り返してるのが、ほんまに許せへんかったんやと思う。
雪乃をあんなふうにしたんは……俺や……」
リセットボタンが欲しかったのは、私だけではないのかもしれない。