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異端児カラス
【学園物 官能小説】

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愛の形-3



ヤナが私を好きだということに、私は本当はもうとっくに気付いていた。



でもヤナがヤマトを裏切らないのをわかっていて、私はヤナを居心地のいい逃げ場所に利用していたのだ。



それがどんなに残酷なことなのか考えもしないで。



ごめんね……ヤナ。
謝るのは私のほうだよ。







「―――なぁ……相原」


「―――何?」



「ここに来る前……ヤマトと会ってたんだろ?」



考えないようにしていたのに、ヤマトの名前を出されて私の胸はズキリと痛んだ。



この苦しい恋から逃げ出してヤナを好きになれれば、私はこんなにつらい想いをしなくて済むのかもしれない。



ヤナとならば悩むことも気負うこともなく、楽な恋ができるだろう。



ヤナと私は
とてもよく似ているから――。


「ヤマトに……何か言われたのか……?」



「……別に……何も」



あの状況で話すことなど何もないと思う。


ヤマトと雪乃の関係を確かめようと私がヤマトの部屋を訪れた時、二人はベッドの上で重なり合っていた。


下着姿の雪乃と、その上に覆いかぶさるヤマト。
雪乃の腕がヤマトの背中に蛇のように絡みついて、強く抱き寄せようとしているのがわかった。


私が突然現れたのにもかかわらず、雪乃は動揺ひとつ見せなかった。


そればかりか、私と目があった瞬間、勝ち誇ったようにニヤリと笑ったのだ。



『アンタなんかヤマトの彼女でもなんでもないわ』



そう言われた気がした。



気がつけば私は部屋を飛び出していた。ヤマトが私を呼びとめる声が聞こえたけれど、私は振り返らなかった。



とにかく私は、一刻も早く目の前の現実から逃げ出したかったのだ。






「……それで飛び出してきたの……?」



私が頷くと、ヤナはあきれたようにため息をついた。


「なんで逃げたんだよ。……ヤマトは待てって言ったんだろ?」



「……だって」



あの状況で何を言われても、私はきっと納得できないよ。


しどろもどろの言い訳を聞けば聞くほど、みじめになるだけだったと思う。




「ヤマトを信じてやれって……俺、言っただろ?なんでちゃんとアイツと話さなかったんだ」




ヤナがこんなふうに私を責めるような言い方をするのは本当に珍しい。


決めつけるようなヤナの口調に私もカチンときた。



「だからっ………私の目の前で……ヤマトは雪乃さんと抱き合ってたのよ!私はこの目で見たの!」



「落ち着け!」



感情的になる私をヤナが強い口調で遮った。




「……ヤマトが姫とヨリを戻すなんて、ありえないから」



「……でも、現に……」



「姫がどんな女なのか、ヤマトから何も聞いてない?」


「……何も……聞いてないよ」


―――いや、聞いてないのではなくて、私が聞こうとしていなかっただけなのかもしれない。



ヤマトは花火大会以来、ずっと私と話がしたそうだった。
それを徹底的に避けていたのは私のほうだ――――。




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