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夜明けのシンデレラ(♂)
【ラブコメ 官能小説】

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夜明けのシンデレラ(♂)-10

――ピンポーン…

「あ、来たのかな」

パタパタと、狭い家の中なのに思わず小走りしてしまう。

玄関ドアの小窓の向こうには、寒さでマフラーに顎まで埋めてる愛しい人。

――ガチャリ

「智哉!」
冷えた頬に手を伸ばして、その肌に触れる。

「遅くなってごめんね、桜子さん」
謝る智哉の吐く息が白い。

「大丈夫。待ってたよ!」
後ろ手に智哉がドアを閉める音を聞きながら、私は、その胸の中に飛び込んだ。


…父さん、母さん。
わかってるの。
これは、いけない事なの。

――それでも。

私、この人が好きなの…。


「すぐご飯にするね〜」
部屋に入り、掛けているダテ眼鏡が曇ってしまった智哉に笑いながら、私はシチューを温め始める。

「座って待って…」

「――桜子さん!!」

ガシャン!

(…び、びっくりした…)
突然、智哉の大声。
思わず、オタマ落っことしちゃったじゃん。

「ど、どうしたの?」
振り向けば、真剣な眼差しでこちらを見つめる智哉がいた。

「…これ、明後日の『お見合い』って…」
そう言って、彼が指さす先はカレンダーのようだ。

「あぁ!なんか、お相手は会社の上司のお子さんなんだって」

落としたオタマを洗ってから、シチューをお皿によそる。

「はい、智哉。ご飯だ…よ…?」
思わず、語尾が疑問形になってしまった

だって。
智哉が、険しい表情でカレンダーを見つめて立ち尽くしたままだから。

…弟がいることは前に話をしてあるし、央太のお見合いだということもちゃんと書いてあるんだけど、何がそんなに気になっているのかしら?

「…なんで、見合いなんて…」
絞り出すような智哉の声。

「わ、わかんないけど…。とりあえず、頼まれちゃったし行ってくるね。日曜日…どうせ暇だし」
あ、ちょっと嫌みぽかったかしら?

「…そう、だよね。桜子さんが決めたことなら…」
「智哉?」
「――わかった。…ご飯にしよ、桜子さん」

そう言って、智哉は淋しそうに笑った。

…そんなに嫌みが効いたのかしら?




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