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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-63


(それに…いくら姉さんが、血も涙も無い冷酷非道な魔女の同義語みたいな人だからって、俺が死にそうなのを放っておくだろうか?)
 事実、本当に放って置かれているのだが、それも聡には知る由も無い。
(仮に姉さんが俺を無視したとしても、燐ちゃんとアブリスちゃんだって居るんだし、大丈夫だろう)
 しかし、その二人にも(以下略)。
 ――聡は、(彼の現状では文字通り致命的な事に)己の危機に瀕しても、大して思考が鋭くならないタイプの人間のようだった。
「聡さん? どうしたんですか?」
 急に黙り込んだ聡を不思議に思った茉莉は、聡の顔を下から覗き込むようにして声を掛けた。
「え!? あ…な、何でもないですよ?」
 気が付けば、妙に近い位置に茉莉の顔があった事に驚き、聡は色んなモノ(特に理性)を守るために後退った。
「ああ、もしかして、お手洗いですか? それなら向こう岸にあるんですけど、行きませ…」
「行きませんよ!! …って、こんな状態でも生理現象って起こるんですか?」
「(被せでツッ込まれてしまいました…)まだ死にたてで、生前の記憶が多い方ですと…空腹を感じたり、眠気を感じたりするみたいですよ?」
「確かに、そう言われてみると、ハラが減ったような気も…」
「それなら、向こう岸に美味しいお団子屋さんがあるんですよ、行きま…」
「だから行きませんって!!」
 結局、こんなやり取りが、吉祥が目覚めるまで続いていた。


 だから――此方の先――ウツシヨで、後輩が泣いている事など、聡には知る由も無かった。


 涙目で『…私に、出来る事…何でも、言ってください』と、普段では絶対にありえない言葉を、すがる様に吐いた妃依に対し、ヘクセンは、
『弟様を復活させる為!! まずは私をマイボディーへとセットして頂けませんか!? ええ、あくまでも弟様復活のために!! 私を!! ボディーに!!』
 これ幸いと、大分本音の混じった提案をした(実際、機能を使うために外装は必要だったのだが)。
 そんな、私欲まみれのヘクセンの言葉にすら、妃依は何の疑いも無く素直に従い、指示を受けつつ作業を進めた。
 それから一分も経たない内に、ヘクセンはボディーへの帰還を果たしていた。
「ンッン〜♪ 多少ゲロにまみれてはいますが!! 実にスガスガしい気分ですねッ!! 歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分ですよ!! アハハハハハハァッ!! 最高に『High』ってヤツですネェェェェェッ!!!!」
 そして、即、暴走。
「…ヘクセン、さん…先輩を…」
「ハ…ッ!! そうでした!! 喜びの余り、うっかり忘れ…アアアアアッ!! 違うッ!! 今の発言はともかく!! これ以上、弟様をこのままにはしておけません!! さあ、今すぐ蘇生術式を開始しますよ!?」
 ガシィッ、と腕を胸の前でクロスさせたヘクセンの指先から、青白い雷光が奔る。
「エクスターナル・デフィブリレイター!! フルドライヴ!!」
 叫び声と共に、雷光は一層、その光度を増した。
「アハハハハハハァッ!! これなら!! 神でも殺せそうですよ!! ハッハハハハハハ!!」
「…(ぐすっ)…」
 悪ノリするヘクセンとは裏腹に、テンション最低状態の妃依はツッ込む事もなく、ただ泣きそうな目でヘクセンを見つめる。
「ハハハ、は…あ、ああぁええと、も、もちろん!! 弟様の事は殺したりしませんし!! …と言うか、むしろ死んでるから殺せない!? …って、だだ、だから!! じょ、冗談ですよッ!? マスター!! アハハ…!!」
 いつもとは反応がまるで異なる妃依に、ヘクセンは動揺しっぱなしだった。
「す〜…は〜…!!」
 妃依の表情を見ている内に、何故か妙にヒートアップしてきた中央演算処理装置を冷ます為、深呼吸をひとつ。
「ハイッ!! では、マスターにも手伝ってもらいますよッ!?」
「…どう、すれば…いいんですか」
「人命救助と言ったら、ホラ!! お約束のモノがあるじゃないですか!! マスター!!」
「…じん、こう…こきゅ…ぅ…ですか…」
 真っ青になっていた顔に、僅かに朱がさした。


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