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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-41


「あなたが、燐様、ですか?」
 聡の後ろから中の様子を伺うように現れた少女が、確認するように言った。
「え? …はい。わたくしが、湖賀燐ですが…貴女はアブリスさんでしょうか?」
「はいっ!! わたし、アブリスって言います、よろしくお願いします!!」
 アブリスは勢い良く45度以上のお辞儀をする。勢い余り過ぎて、斜め前に立っていた聡の脇腹にクリティカルヒットしたというのは余談である。
「…女の子型、ですか」
 妃依は、さほど興味は無い、という風に呟きつつも、その実、少女と自分との体格差(特に身長差)についての洞察に全力を注いでいた。
「心配しなくても、あの子は貴女よりも少しだけ小さいはずよ。各サイズ共に、ね」
「…べ、別に、そんな事を心配してはいません」
 と、言いつつも、内心ホッとしていた訳だが。
「ところでアブリス。その漫画雑誌は何かしら?」
 出て行った時と比べて増えていた物は、アブリスが持っていたビニール袋入りの少女漫画だけだ。ヘクセンが減っている事に関しては、あえて問わなかった(姉弟共に薄情だった)。
「あっ、これは、聡様に買ってもらいました」
「正確には、和馬に奢らせた訳だけど…って、あ」
 言ってすぐに、自分が余計な事を口走った事に気が付く。
「…はぁ…またですか、先輩は…本当に懲りませんね」
 先輩が他人にお金を依存する癖は相変わらずだな…と、妃依は呆れた表情で溜息を吐いた。
「全くだ。笹倉が哀れだと思わないのか」
 以前、聡に奢ってやった経験のある(と言っても50円だが)美咲は、大いに頷く。
「…燐ちゃん、この際だから、前に貸した三千円、返してもらったら」
「わたくし…遊佐間先輩にお金をお貸ししましたでしょうか?」
 貸したのが一ヶ月程前であった事もあり、燐は貸した事実をすっかり忘却の彼方へと追いやっていたらしい。
「いかんぞ、湖賀。あの男にそういう態度では付け上がるばかりだ。ここは利子率200%程で高圧的に取り立てるべきだろう」
「ですが…わたくしが失念していた事柄ですし…特に現状の私財に困っている訳でもございませんから」
「おおっ…燐ちゃん!! 君の懐は、空より広くて海より深い!! 嗚呼、ありがとう!!」
 ずさっ、と音のする勢いで燐が座っているソファーの前に跪き、聡は燐の手を取って落涙した。
「…早くも調子に乗ってますね」
 そう言えば、自分も千円程、まだ返して貰っていない事に思い当たるが、今それを言い出すのは自分がケチだと表明するようなモノなので、とりあえず心に仕舞っておいた。今だけは。
「聡…バイトでもしてみたらどうかしら? いつまでも人様に頼ってばかりでは、良く無いわ」
「姉さんが言うな!! 姉さんが保有している親父達からの送金のうち、一割でも俺にくれれば、こんな事にはならないってのに!!」
「あら、このお金は、私の精神的充足と、サリィの為の物よ」
 遊佐間家金銭ルート表:父⇒母→姉→猫 … 弟
「はは…俺は…きっと死兆星の下に生まれたんだ…きっとそうだ…」
 聡はベランダにフラフラした足取りで出ると、空を眺め、消え入りそうな声で呟いた。
 そんな聡を放って、居間では話が進んでいた。
「ところで…アブリスさんは、その、本当にアンドロイドなのでしょうか…?」
 アブリスは、ヘクセンの様に言動が突飛な訳でもなかったので、燐の目からは、どう見ても普通の女の子にしか見えなかったのであろう。
「はい。型式番号『KY-02-R Abriss』です。あっ…兄様が『我輩の名は『KY-01-R Anfang』だ』と、言ってます」
 ヘクセンから貰った『光学式指向性通信機能』を嬉しそうに使い、頭の上に居る兄の言葉を伝える。
「お兄様…? ですか?」
 燐はキョロキョロと周囲に目を向けるが、その『兄様』とやらは何所にも見当たらない。


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