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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-23

 三十分後、散々に聡の愛蔵書を読み散らかして、妙に満足げに居間に戻ってきた三人と、『人生って何だろう』と、心が枯れ果てた様子で居間へと戻ってきた聡は、今から何をするかについて話し合っていた。
「折角の泊まりなのだから、やる事と言えば一つよね」
 琴葉が早速そう切り出す。
「…まさか、トランプ、ですか」
 そうに違いないと確信していたが、もしかしたらと思い、聞いてみた。
「そうよ、フフ、解ってるわね」
 嬉しくなかった。
「俺、もう寝たい…」
 先程のショックがまだ抜けていなかった。だいぶ無気力になっている。
「弟様!! 今夜は寝かせませんよ!! って、いやぁん!! この台詞、ちょっとヤラシイですね!!」
「…それはともかく、徹夜でトランプなんて、聞いたことも無いですけど」
「そう? 悠樹と二人でよくやっているのだけれど…おかしいかしら」
 おかしいと言えば、どこまでも間違っていておかしいのだが、そんな事を口に出来るはずもなかった。
「…全然、おかしくないですよ(琴葉先輩達にとっては)」
「トランプ、トランプって、他にすることあるだろ…姉さん」
 聡はぐったりしつつも、そうツッ込まずにはいられなかった。
「あら、じゃあ、他に何があると言うの?」
「それは…あー…思いつかないけど」
 流石は姉弟だった。
「…ヘクセンさん、なにか大勢で出来るゲームとか内蔵されてないんですか」
 そんな二人を見ていて居たたまれなくなり、妃依はヘクセンに問いかけていた。
「もちろん搭載されてますとも!! 3Dトランプゲームが!! 何と空中に立体投影するんですよ!? ああ!! とてもハイテク!! 素敵ですね!!」
 気が付くべきだった。コレを作ったのも、琴葉先輩だったという事に。
「じゃあ、トランプで異存は無いのね」
「…はい…」
 消去法によって、それ以外の選択肢は存在しなかった。


 三時四十五分。この時間帯になると、テンションもだんだんと壊れ気味になってきて、何を思ったか、延々と『銀行』をやっていた。
「フフ…ジョーカー、二千円よ、さあ、出しなさい」
「あっはっはっはっは!! 払いますよ!! 二千円くらい!! あっはっはっは!!」
「ははは!! ヘクセン、お前、それ足りてないって…あっ!! 俺も足りねえや、はははははは!! ひよちゃん、貸して貸して!!」
「…いやです」
 妃依は、ふとした瞬間に冷静になる自分を、必死に無視していた。昼間も散々思っていたことだが、今のこの状態で『何やってるんだろ、私』などと一瞬でも考えてしまったら、ベランダから飛び降りたくなってくるかもしれない。
「それじゃあ、一騎打ちね、妃依」
「…はい、もう、いっそ望むところです…」
 心の深い部分で、妃依は壊れつつあった。
 そして、さらに時は過ぎ、窓から(健康に寝起きした人にとって)心地よい日差しが射し込んできて、スズメの鳴き声も聞こえてくるような時刻になり、ようやく、
「ね、眠い、俺、寝たい」
 片言で聡がそう呟いた。流石に限界を超えているらしく、殆ど前すら見ていない。ゆらゆらと不健康なリズムで前後左右に揺れていた。
「そ、それを言ったら…!! お終いですよっ!! 弟様っ!! はぁ、はぁ!!」
 ヘクセンはヘクセンで、連続起動時間を超えていたため、酸素を取り込んで何とかエネルギーを確保しようと息を荒げていた。
「…ん、む…ぅ…」
 妃依は既に寝ていた。テーブルにうつ伏せる様に、ぐったりと。しかも、何処と無く苦しげだった。
「お、おや!? いつの間にやら、琴葉様が居なくなってますよ…!?」
「俺、眠い、寝る…」
 ちなみに、琴葉は一時間ほど前に己の部屋で眠りに就いていた。
「寝てはいけません!! 弟様ァッ!! こ、ここで寝てしまったら!! 寝てしまったらぁー…!!」
 そう言ったきり、ヘクセンは椅子ごと後ろへとばったりと倒れて、強制的にスリープモードへと移行してしまった。
「ね、寝る、俺寝る…寝る…」
 聡は壊れたレコードの様に呟いていたが、意識は既に無かった。つまり、この時点で四人は全滅した。


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