真実-4
「変わってないのね。彰吾の部屋」
俺の部屋に入るなり、雪乃は当たり前のようにベッドにどっかと腰を下ろした。
「……噂ってなんやねん」
前置きなんてどうだっていい。
俺は気ばかり焦ってイライラしていた。
雪乃が相原の何を知っているのか、気になって仕方がない。
「やぁね。何熱くなってんの?」
雪乃は、カッカしている俺を小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「そんな顔されたら、なんか簡単に教えたくなくなっちゃったなぁ」
「お前……ええ加減にせぇよ」
俺は思わずカッとなって雪乃に詰め寄った。胸ぐらをつかみたい衝動をぐっとこらえる。
コイツが女やなかったら、完全に殴ってるところや―――。
「……取引しない?……」
雪乃はゆっくり立ち上がると、ねっとりと絡み付くように俺の目を見ながら、羽織っていたカーディガンを脱ぎ捨てた。
ほとんど下着姿のようなミニのキャミワンピース姿が、まるで安っぽい娼婦のようで、俺をますます不愉快にさせる。
ヘドがでそうや――――。
俺はなんでこんな女と付き合うてたんやろう。
「……あたしを抱いたら教えてあげてもいいわ……」
雪乃は薄く唇を開き、胸の谷間を見せつけるように挑発的に身をくねらせながら、俺のシャツを引っ張って身体を密着させてきた。
「……ホンマ……最低やな」
俺の中に――性欲や情欲ではなく単なる怒りから――目の前の雪乃をめちゃくちゃにしてやりたいという危ない衝動が込み上げていた。
「……キスしてよ」
甘い声で囁きながら、雪乃はワンピースの肩紐をするりと外した。
冗談のようにあっけなくそれは足元に滑り落ち、雪乃はあっという間に下着姿になってしまった。
黒い小さな布が張り付いた、煽情的すぎるその肉体。
目の前にぶら下がったたわわな果実に、俺の理性は圧倒されかかっていた。
今すぐその中心部を俺の凶器でひっかき回して、この口の減らない生意気な女を屈服させたらどんなにいい気分だろうか。
この女がどこをどうすればよがり、泣き喚くのか、俺は十分すぎるほど知り尽くしているのだ。
いや……アカン。
俺は相原を悲しませることは絶対にせえへんと決めたんや。
「……やめぇや……ヤらへんで」
自分自身の俗っぽい衝動を必死で振り払うように、俺は視線をそらした。
「……よく言うわ……好きなクセに……」
雪乃の腕が、素早く俺の首に絡み付いてきた。
俺の胸板に惜し気もなく押し付けられる弾力のある豊満な乳房。
習慣とは恐ろしいもので、こんなにも気持ちでは雪乃を拒んでいるにもかかわらず、俺は一瞬、条件反射で雪乃を抱きしめてしまいそうになった。
実は、俺たちは別れてからも何回か寝たことがある。
ただ欲望を排泄するだけの虚しい交わり。
それでもその瞬間だけは肉体が快楽にうち震え、俺達は刹那、心まで満たされたかのような錯覚に陥った。
誰もきちんと愛せない後ろめたい自分をごまかすように、俺はいつも求められるままに雪乃を抱いた。
でもそれは一瞬で覚めてしまう虚しい夢や―――。