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異端児カラス
【学園物 官能小説】

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真実-3



黒い霧のような不安が俺の胸を一気に支配していく。



雪乃のあの悪魔のような微笑み――――。



―――――――――――――



「………何かはわからへんねんけど……なんか……嫌な予感がすんねん……」



今日までのいきさつを話し終えてふと顔をあげると、ヤナは俺以上に深刻な顔をしていた。





「……面白い噂……」




ヤナは呻くようにつぶやき、眉間にシワを寄せてギュッと唇をかんだ。



俺にはその『噂』が何なのかまったく見当がつかないが、少なくとも相原にとってよくない物であることは間違いない。




「――――ヤマト」




ヤナが、急に今まで見たことがないくらい真面目な顔で俺を真っ直ぐ睨みつけた。


「………な、なんや?」


今からヤナが言うであろう言葉を想像して、俺の神経がキリキリと逆立っていく。



その言葉を聞いてしまったら、
俺は多分、もうヤナと親友ではいられへんようになる―――。



そんな予感がした。




「お前、その噂がなんであれ、相原のことちゃんと守ってやれるか?」




「………あたり前やろ」




……ヤナ。
やっぱりそうなんやな……。






「ヤマトがもし……また相原を泣かせたら……俺……今度はお前のこと許さねぇからな」




「……ヤナ……お前……」



俺は静かに絶望する。



ヤナは、俺がたじろいてしまいそうなほどの強い視線で俺の目をじっと見ながら、静かに、しかしハッキリとこう言った。




「俺……相原のこと好きだから」



「………………」



『聞いてしまった』という後悔が、澄み切った水の中にこぼれた墨汁のように、もやもやと心を曇らせていく。



ヤナの気持ちに、俺は多分もうずっと前から気がついてたんやと思う。


親友としてのヤナを失いたくなくて、俺はずっとその事実から目を背けてたんや――。



ゴメンな。ヤナ。
俺はお前の気持ちを薄々知りながら、無神経な行動をたくさんとってきた。



誰よりも近くで俺と相原のことを見守らなければならなかったお前は、本当につらかったやろうと思う。



部室の狭い空間には、重苦しい空気が充満していた。




突然、沈黙を破るように俺の手の中のケータイが着信を告げた。ディスプレイには「雪乃」の名前。



俺は一瞬ためらいながらも電話を耳に当てた。



「………もしもし?」






『今どこぉ?もう彰吾の家に着いてるんだけどぉ。――面白い話、聞きたくないのぉ?』



雪乃の軽薄な口調が無性にイラつく。



「……お前、何企んでんねん」


『……別にぃ?ただ忠告してあげたいだけよ。彰吾の大切な彼女が、実はどんな女なのかってことをね』



ヤナはギュッと目を閉じて、ほんまにつらそうな顔でじっとうつむいている。
ひょっとしたらヤナは、その『噂』が何なのか、わかってるんやないかという気がした。


「今から行くし……そこで待っといてくれ……」



俺はそれだけ言うと電話を切って立ち上がった。



とてつもなく、嫌なことがおこりそうな予感がしていた。



何があっても、俺が相原を守ったる。
絶対に、誰にもあいつを傷つけさせへん。



込み上げる焦燥感に駆られて、俺は部室を飛び出していた。






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