疑心-4
―――え?
思わず手がとまる。
『エタニティ』
―――雪乃がつけていた香水。
その香りは間違いなくヤマトのケータイに染み付いていた。
雪乃がベッドに寝そべって、勝ち誇ったような微笑みを浮かべながらヤマトのケータイをいじっている姿が目に浮かぶ。
ヤマト………
この香り――いつついたの?
花火大会からは日がたちすぎている。
ひょっとして、あれからまた雪乃さんと会ってる―――?
女の甘い香りを放つケータイ。
その緑の着信ライトが、まるで私を挑発するように点滅していた。
「ヤマト――ごめん」
見てはいけないと思いながら、自分をどうしても抑えることが出来ず、私はケータイを開いていた。
『不在着信5件』
『新着メールあり』
胸がドキドキした。
――私、何やってるんだろう。
震える指で受信フォルダを開くと、そこには案の定、一番見たくない名前があった。
『雪乃』
やっぱり―――。
心臓をえぐられるような鋭い痛みが私を貫く。
画面にはついさっき届いたばかりの最新メールが表示されていた。
『昨日は会えて嬉しかった。今日は6時に彰吾の家にいくから………』
その瞬間、頭が真っ白になった。
何―――?
昨日雪乃さんと会ってたの?
今日も、また会うの?
ヤマト―――?
ハートがいっぱいちりばめられたピンク色のメールは、その後もまだ長々と続いていたけれど、怖くてその先の文面が読めなかった。
私は自分の鞄をつかんで立ち上がった。
もうまともにヤマトの顔なんか見られない。
慌てて出ようとしたドアのところで、ちょうど部室に入ってきたヤナとぶつかった。
「おっ…と………相原?」
私のひどい顔を見てヤナがぎょっとしたように目を見開いた。