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棒ちゃん
【家族 その他小説】

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棒ちゃん-1

棒ちゃんはお母さんから生まれてくるときに仮死状態で生まれてきました。

お医者さんがいっぱいいっぱい頑張って棒ちゃんの止まっていた心臓が動き始めました。

少し日にちがたったときお医者さんがお母さんに言いました。

「棒ちゃんに障がいがあるかもしれない」

お母さんはそれを聞いて言いました

「この子が生きているだけで私は幸せです。障がいなんて関係ありません」

お母さんの目はとても優しく棒ちゃんを見つめていました。

棒ちゃんはお母さんにとても愛されて少しずつ大きくなりました。

周りの子達より物覚えが悪くても、言葉が上手く話せなくても

お母さんにとっては棒ちゃんは何よりも大切な宝物でした。

棒ちゃんは養護学校へ入り、お友達がたくさん出来ました。

少ししか話せなかった言葉も先生に教えてもらってゆっくりと話せるようになりました。

「お母さん、お母さん」「なあに、なあに」

お母さんは棒ちゃんがお母さんと言ってくれるのがとても嬉しくてたまりませんでした。

お歌も学校で覚えました。

たくさんたくさん歌えるようになって、お家でもお母さんにたくさんのお歌を歌ってくれました。

体はあまり強くなくて学校を休むこともたびたびでしたが、棒ちゃんは学校が大好きでした。

学校を卒業する頃には棒ちゃんはたくさんのお友達、先生、お歌、色んな物を覚えました。

学校を卒業してから、棒ちゃんは家にいることが多くなりました。

お外にはたくさんの病気があるから

病気にかかると棒ちゃんは大変だから

お母さんはそう言うと棒ちゃんは「えー」と駄々をこねました。

「お母さんは棒ちゃんの事が大切だから、長く生きて欲しいから、ごめんね、ごめんね」

お母さんは怖いと思っていました。

もし、棒ちゃんが病気になって死んでしまったら。

もう会えなくなったら。

その事を考えるだけで胸が苦しくなりました。

「お友達に会いたいよ。先生に会いたいよ」

その棒ちゃんの言葉にお母さんは「ごめんね、ごめんね」としか答えられませんでした。

ある時、ふと棒ちゃんの食欲がない事にお母さんは気がつきました。

「どうしたの?」

お母さんが聞くと棒ちゃんは「お腹痛いの」と言いました。

心配になったお母さんは棒ちゃんを病院へ連れて行きました。

「余命三ヶ月です」

お医者さんの言葉にお母さんは驚きました。

隣に座っている棒ちゃんは「なーにー?」と言っていました。

棒ちゃんの体には悪い菌がたくさん増えてしまってもう手術をしても治らないとお医者さんに言われました。

お母さんは泣きました。

棒ちゃんは「どうしたの、どうしたの」とお母さんに問いかけます。

「ごめんね、ごめんね」

お母さんからはその言葉しか出てきませんでした。

棒ちゃんの余命の事を学校時代の先生に伝えると先生はクリスマス会をしましょうと提案してくれました。

棒ちゃんの友達や先生、全員集めて楽しくクリスマス会が行われました。

でも、棒ちゃんはそのクリスマス会には出れませんでした。

ご飯がどうしても食べられなくて、病院に入院することになってしまったからです。

クリスマス会が終わってから友達と先生が病院へ来て、棒ちゃんにプレゼントを渡しました。

クリスマス会で作ったみんなで描いた棒ちゃんがそこにありました。

大きな大きなケーキも持ってきてくれました。

小さく一口だけ食べると棒ちゃんは「おいしいね、おいしいね」と言いました。

これが棒ちゃんが過ごした最後のクリスマスとなりました。

棒ちゃんは幸せだったと思います。

大好きなお母さんの胸で静かに眠りについたのだから。

最後のクリスマスに

みんなにあんなに祝福されたのだから

元気ですか棒ちゃん

できればもう一回君のお歌が聴きたかったです

できればもう一回

僕の手を握って名前を言って貰いたかったです

2011.12.19


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