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異端児カラス
【学園物 官能小説】

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塒(ねぐら)-7



部屋を出る時、 相原が自分からキスをしてくれた。それはささいなことだったけれど、俺にとっては本当に嬉しいことだった。


エレベーターに乗り込むと急激に喉が渇いてきた。相原の入れてくれたオレンジジュースはもちろん旨かったけれど、どうやらそれだけでは足りなかったようだ。

帰りにコンビニでスポーツドリンクでも買うか―――。
ポケットの中の小銭を手探りで確認する。


『俺……頑張りすぎや……』


顔がニヤつくのを必死で押さえながらマンションの玄関ホールに降りると、入口のガラス扉を押して見慣れた顔が入ってきた。

手にはコンビニの袋を下げている。


俺は驚いて大きな声を出していた。



「ヤナ……?!お前こんなとこで何してんねん?」


ヤナは俺にここで会うのがわかっていたかのように落ち着いた顔をしている。


「……何って、ここ俺ん家だから」


「……えっ?お前ん家って山手町にある豪邸やろ?」


ヤナはいつものように、表情に乏しい薄い笑いを浮かべる。


「あれは親父ん家。ここは俺一人で住んでんの」


「うわ…ほんまかいな?自分の部屋が分譲マンション?やっぱ大社長の御曹子はちゃうなぁ」


「で、ヤマトは?……相原に会いに来たの」


ヤナはニヤニヤ笑いながら俺を肘で小突く。


「………おん。まぁな」


「その調子じゃ、明日の試験は俺の勝ちかな」


ヤナは楽しそうに笑って、持っていたコンビニの袋からスポーツドリンクを一本俺にくれた。


「……あ……サンキュ……」


なんとなく、相原の部屋での一部始終をヤナに見られていたような変な気分になった。


実際、俺はヤナにはいつも行動を全部見透かされているような気がする。


そう、まるで俺にとって相原がそうであるように―――。



「じゃ、おやすみ」

「――おやすみ」


たった今俺が降りてきたばかりのエレベーターをヤナが上がっていく。


何かはわからないが、自分でも説明のできないモヤモヤした不安が俺の心に立ち込めていた。





END


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