孤独-7
「ほんまにエエんか……?お前……初めてやろ……?」
最後にもう一度だけ確認しようと思い尋ねると、相原は少し躊躇いを見せたあと、小さな声で言った。
「……ちがうよ……」
胸がズキッと痛んだ。
学校では全く男の気配など感じさせない相原。クラスの男子と口をきいている姿さえほとんど見たことがない。
だから俺は、勝手に相原が処女だときめつけていたのだ。
処女じゃない。
相原はそう言った。
普段の相原を見ている限り、彼女が男と交わっている姿など全く想像がつかない。
しかしよく考えてみれば、俺はこの学校に転校して来る前の相原のことを何も知らない。
いつも目立たないように気配を消しているけれど、こんなに綺麗で知的な相原が、過去に誰かとつきあっていたとしても不思議ではなかった。
一体いつ……どんな男が……この愛しい相原を女にしたのだ。
想定外の展開に、湧きあがる嫉妬心を処理しきれない。
「……ヤマト……ごめんね……」
俺は多分ひどい顔をしていたのだろう。相原は母親のように俺の頭を撫でた。
こんな時どんな顔をすればええんや……?
笑って「大丈夫や」って言うたらええんか?
怒って「許さへん」って言うたらええんか?
「相原………」
俺は相原を抱きしめた。
そうしなければ目の前の相原が消えてなくなってしまいそうな気がした。
「そいつのこと……まだ好きなん……?」
最低でカッコ悪いと思いながら聞かずにはいられなかった。
相原は軽く首を振って、悲しそうな笑みをうかべた。
「……あんまり……いい思い出じゃないから……」
わけのわからない怒りと切なさが込み上げてきて、俺は相原の唇にむしゃぶりついた。
そんな嫌な思い出は全部俺が消したる。
お前の心にあいた穴がどんなに大きくても、俺が溢れるまで愛を注ぎ込んだるわ。
「相原……好きや……もう誰にもわたさへん」
「……ヤマト……」