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異端児カラス
【学園物 官能小説】

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孤独-1



俺は自分の性格を持て余している。
頼られると嫌とはいえない。
困ってる奴をほっとけない。
集まってくる奴を邪険にできない。

だからみんなは声を揃えて俺のことを「イイヒト」だという。
言われればその期待に応えなければとますます「イイヒト」を演じようとしてしまう。

みんなに慕われ頼られ、いつも誰かに囲まれる毎日。


楽しいねんけど……
本音を言えば
ちょっとしんどい。


俺も自分をさらけだして誰かに甘えたいときがあんねん。





「キャプテン!何ぼーっとしてんだよ」

俺の肩を軽く叩いたのは陸上部の副キャプテンの柳沢亮。
転校してきたばかりの俺を陸上部に誘ってくれた優しいヤナ。


俺が入部してなければ、きっとヤナがキャプテンになっていたはずだ。

「ヤナ……ちょ悪ぃねんけど、俺今日もうあがるわ」


「ヤマトが部活早退なんて珍しいな……なんかあったのか?」


心配そうなヤナ。
お前はほんまええ奴やなぁ。


いつも俺を信頼して支えてくれるヤナ。
ほんまの俺はお前が思ってるほど信頼できる男とちゃうねんで。


ほんまは俺よりヤナのほうがキャプテンに向いていると、俺は今でも思っている。


「いや……ちゃうねん。ちょっと文……せ、生徒会関係の仕事でな……」


……ごめんな、ヤナ。


「そうか、大変だな……まぁあとは俺が適当に回しとくから。……でもあそこにたまってるお前のファンにだけ声かけて行けよ。後で文句言われるの俺だからな」

フェンスの向こう側には7〜8人の女子の集団が見えた。



「おん。わかった。ほんまにごめんな」



俺はすれ違いざまにヤナの肩をポンと叩くと、スポーツタオルを首にかけて彼女たちのほうへ向かった。


近づいていく俺を見て黄色い歓声が上がっている。


「ヤマトせんぱぁい」

「カッコイイー」


フェンス越しに手を振る女の子たち。こうしていると俺は、動物園の檻に入っているパンダのような気分になり、マジで気が滅入る。


「いつもありがとうな。今日俺ちょっと用事あるし、もうあがんねん。ごめんな」


「えー。もう行っちゃうんですかぁ」


俺のファンだといって集まってくる女の子たち。


みんな同じお面をかぶったみたいな「カワイイ」笑顔。


「おん。せっかく応援来てくれたのにほんまごめんな。みんなも気ぃつけて帰りや」

「もっと見たいのにぃ。あと一回だけ走ってぇ」

「腹筋みたいー」


一人だと何も主張しないくせに、群れを作っている時だけ言動がやたら厚かましくなるのは、自分が集団の中に巧妙に埋もれてしまえるという自覚があるからなのだろうか。


彼女たちと喋っていると、俺の心は寒々しくなる。
そして面倒だと思いつつもにこやかな笑顔で応対してしまう自分自身にも嫌気がさす。


付き合ってたらキリがないから、俺は軽く手を振って彼女たちに背を向けた。


……あほくさ。
何が「あと一回走れ」や。
なんでいちいちオマエらに腹筋見せなあかんねん。


俺あやまってばっかりやんけ。
俺が何したっちゅうねん――。


コイツらは俺を好きだと言いながら、俺を人間だと思っていない。


「ヤマト」という名の偶像で遊んでいるだけだ。


たくさんの仲間に囲まれているようで、自分一人だけ浮いているような違和感。


俺はいつでも、誰よりもたくさんの人間に囲まれていながら誰よりも孤独だった。


あいつの存在に気付くまでは――。






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