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異端児カラス
【学園物 官能小説】

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封印-3

その瞬間を素早く捕らえるように、ヤマトの陽気なお喋りが始まった。


ユーモアに富んだその語り口で彼はこの学校の印象や、前の学校での体験談を面白おかしく語っていく。


気がつけば誰もがヤマトに魅きつけられ、ステージから目が離せなくなってしまっていた。


「アイツ誰?」
「何組の子なの?」


会場がそんなひそひそ話で再びザワつき始める中、ヤマトはまるで芸能人のソロトークライブのように一人でしゃべりまくって大いに会場を盛り上げ、一日にして学校一の人気者になった。


そしてこの春、断トツのトップ当選で生徒会長に選ばれたのだ。


生徒会長になって張り切ってるんだろうけど、うちの部を巻き込むのはやめて欲しい。


それでなくても、今文芸部は問題を抱えているのだ。



「文芸部。このままやとヤバイんやろ」


急に真面目な声で痛いところをつかれてドキリとした。


この春三年生が卒業して、文芸部はついに、学校が定めるクラブとしての最低人員を割ってしまった。
今月中に部員が集まらなければ廃部にすると顧問から言われている。


自分が部長の時にクラブがつぶれるなんてくやしすぎる。


なんとかしなければと思いながら、無理に部員を集めるのも何か違う気がして……だけど結局何も出来なくて……。


自分がホント情けなくて毎日悩んでいたのは事実。


全部調べあげてきたというわけか。

廃部寸前だった文芸部をヤマトが救済したと聞けば、さぞ彼のファンは喜ぶのだろう。


ヤマトのこういう用意周到な感じが私はすごく苦手。
他人の言動まで先回りして全て見透かしているような段取りのよさがなんだか恐く感じてしまう。



「……だけど……文芸部って……詩や小説を書く部なの。あんたみたいに書かない人に入ってもらってもしょうがないもん……。」


したり顔のヤマトを見るのがくやしいから、私はぶざまな抵抗を試みる。


「あほ。そんなん名前だけの部員でもええやん。まずはクラブを存続させることが第一やろ。クラブがなくなってしもたら何にもできへんようになるんやで。」



こういうところ。



こういう計算高いヤマトの優しさにみんな騙されるのだ。


全校生徒からみたヤマトはたぶん――。


『頼れるリーダー』
『気配りのできるやさしい先輩』
『みんなから好かれるカッコイイ兄貴』


だけどそれが本当のヤマトなんだろうか。
私はたぶん誰よりも彼を胡散臭いと思っている。



「とりあえずクラブとして残ってれば、そこからまた頑張れるやん――。なくなったらもうほんまに何にもできへんねんぞ」


「……まあ…そうだけど……」



ああ、嫌だ。
その『俺はなんでもわかってる』っていう口ぶりが嫌い。



全校生徒に平等に優しいヤマト。
ホントは私のことなんか何も知らないくせに。
うわべだけの熱弁をふるわないで。





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