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誰も書かなかった中国人農業研修生の話
【ノンフィクション その他小説】

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小さな万里の長城と珍しい羊の話-1

9月に入ると、雨の日が続き、研修生も休みは確実にあたった。
朝方の雨が晴れて、日が差した日の事であった。
この街からさほど遠くない街に万里の長城があった、町民が中国の万里の長城を模して作り上げたものであった。
研修生4人(張・白永・若い研修生二人)を車に乗せて、馬鹿にされると思いながら公園を一周する規模の万里の長城を見学することにした。
その頃には、たがいに信頼感も生まれ、臆病ながら研修生を街から連れ出すことを決めた。
研修生を車で市外へ連れ出すことは禁じられていた。
知らなかった事にすれば、それで済む。そう思うことに決め、車を隣町の万里の長城がある公園まで走らせた。
意外であった、黒竜江省に住む彼らにとっては、たとえ本物でなくとも、万里の長城は嬉しかった・・・。
おそらく彼らが住む牡丹江から、本当の中国の万里の長城を見に行くことは、一生無いであろう、場所に到着すると、彼らの喜ぶ姿があった、少し良い事をした気分に浸れた。
その街から、山を越えて別な街へ足を延ばす、途中の林には、パンダが住んでいるとの話に、全員で笑い、車は山を越えた。
その街には、羊をたくさん飼育する、観光施設がある。彼らがもっと喜ぶとの思いに、車を走らせた。
施設に到着後、昼食を御馳走した、レストランでの食事は、カレーのセットメニュー、カレー・コロッケ・サラダ、美味しそうにたべる。
売店ではもちろん研修生は見るだけで買うことなどはしない、私が4人に記念のお土産を買った。
別棟の羊の飼育施設に入る、日本人であれば大喜びのはず、だが、ひつじに何の興味も示さなかった、私は初めて気がついた、彼らの村は大量の羊を飼育する農家がある、少しの数の珍しい羊を見たくらいでは、彼らの感動にはならなかった。そういえば、入場料300円が必要なことを不思議そうに見ていた。
彼らにとって、羊は生活のための家畜でしかなかった、ましてその羊に餌を買い与えるなど、信じられなかったのであろう、彼らには、小さな経営のきれいな農家としか目に映らなかったのである。
偽物と馬鹿にされると思った万里の長城がバカウケ、感動されると思った羊の牧場が、全くウケけなかった、
狭い島国の日本人の常識は、広大な中国の常識とは、正反対である。
この街へ彼らを連れ出したことには、他に理由があった。


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