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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英-44

 家に帰る気にもなれなかったので、俺は公園のベンチで弁当を食べていた。
 もう、日も落ちてしまっているので、人気は無かった。
「暖めてもらえばよかったな…」
 冷たいドリアは美味しくない。
「そういえば、親父と母さんはどこに暮らしてるんだろうな…」
 結局、あのマンションに住む事になったのは俺と姉さんだけで、あの色ボケ夫婦はどこぞに別の住処を確保していたようだ。そして、必要以上の生活費を振り込んできた。が、その金の殆どが、姉さんの手に落ちてしまっているが。
「まあ、いいか…ふ…ふふ…」
 不幸が板についてきた事を自覚する。人として、人並みの幸せが欲しい…。
「…先輩、通報されますよ」
 声に、顔を上げると、そこにはひよちゃんがいた。
「ど、どうしたんだ? ひよちゃん、こんな所に」
「…コンビニに行こうかと」
「ああ、そうか…ひよちゃん家もこの辺だもんね…」
 力なく俺が言った。
「…元気ありませんね」
 言いながら、ひよちゃんが俺の隣に座る。
「幸せが欲しいんだ…」
「…それは何の病気ですか」
「贅沢は言わないから、今すぐ千円欲しい…」
「…駄目人間ですね」
「駄目か…ふふ、俺にぴったりの言葉だ」
 口から自然と笑みが零れる。
「…壊れ過ぎですよ」
「ドンマイ、俺…」
 そんな俺の様子に耐えかねたのか、ひよちゃんは財布を取り出した。
「…貸してあげますよ、千円」
「ほ、ホントに? いいのか? ひよちゃん…」
 遠慮はしない。最低だと思うならそう呼べばいいさ、ふはは…。
「…ただし、買い物袋、持ってください」
 断る理由は無かった。


「聡…キミは…そんなにコンビニが好きだったのかい?」
 和馬は、流石に呆れ声で言う。そりゃあ、小一時間の間に三回も用事があってコンビニに来る奴なんて、滅多にいないだろうがな…。
「俺には、俺の生き方があるんだ…和馬、お前には解るまい」
「それより、今度は妃依さんが一緒みたいだけど…何が?」
 買い物カゴの中身を捌きながら、和馬が聞いてきた。
「…私の荷物持ちです、副部長」
「そ、そう…なんだ…頑張って、聡」
「安い同情はいらない…だから、さっきの500円を奢りにしてくれ」
「それは…別に構わないけど」
「…人として終わってますよ、先輩」
「なんとでも言ってくれ…堕ちる事にためらいは無い」
 きっと、姉さんと暮らす事になった時点で、変なフラグが立ってしまったに違いない。
「えっと、2046円になります」
 和馬が告げると、ひよちゃんが2050円を差し出す。
「2050円からのお預かり、4円のお返しです、ありがとうございました、はい、妃依さん」
 4円とレシートを渡す。
「…どうも」
「はい、聡は、これ」
 主に飲み物類を買っていたせいか、4キロは下らないであろうその買い物袋を俺に渡してきた。
「釈然としないな、俺にはありがとうも無しか」
「だって、聡がお金を払った訳じゃ無いだろう?」
「くそ…金がある奴が偉い世の中なんて…嫌いだ…」
 でも、自分が千円欲しさに後輩に使われている事実は棚に上げる。
「…そういえば、燐ちゃんからも三千円借りてませんでしたか」
 思い出したくない事を思い出させてくれるね…ひよちゃん…。
「それを言うなら、僕も合計で六千円位貸してるんだけど…いつ返してくれるんだい?」
「それは…有名なガキ大将の理論でなんとかならないか?」
「何とかなるような金額じゃ無いと思うんだけどな…」
「…先輩…最悪ですね」
 アア、ソウサ、オレハサイアクサ。
「ふぅ、借金なんて、するもんじゃ無いな…」
 話は終わりだ、と言わんばかりに、俺は買い物袋を手にぶら下げコンビニを出た。
「…あ、逃げた」
「出来ればもう、来ないで欲しいな…」
 二人の言葉には、聞こえないフリをした。
「…というか、私を置いて、どこに行くつもりなんですか」
 その言葉には、足を止めざるを得なかったが。


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