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アイカタ
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アイカタ―――後編-1



現地集合なんて初めてのことやから、俺はいつもより無駄に緊張していた。


コンクールや大会の時は、いつも近所のマクドでシーナと待ち合わせをして、一緒に会場へ向かうようにしている。


待ち合わせしたからというて、別にこれといって意味のある会話をするわけでもないねんけど。


実際こうして一人で来てみると、俺はシーナに相当依存していたんやということがしみじみわかる。



「アイツ……そろそろこっち向こてんのかな………」



電話で確認しようと携帯を取りだしてはみたものの、頭の中に微かな迷いが生じて、俺はそれを再びポケットの中に戻した。


今日はK大の合格発表やから、シーナはそれを見てからここへ来ることになっている。


電話をすれば、嫌でもその結果を聞かされることになるのが怖かった。



俺が聞こうが聞くまいが結果は変わらへんのに――――我ながらしょうもない現実逃避や。


臆病すぎる自分にため息をつきながら改めてまわりを見渡す。


パイプ椅子と事務机が四角く並べられた20畳くらいの合同控え室には、出場するコンビが続々と到着し始めていた。


椅子に座っているのは俺ぐらいで、他のヤツらはみんな壁際に立ってボソボソと稽古を始めている。



………シーナ。
早よ来てくれよ。



いろんな不安感と孤独感がガーッと押し寄せて来て、じっとしていることすら出来なくなった俺は、そわそわと立ち上がって受付のあるロビーのほうへと向かった。


全身の細胞がシーナのことばっかり考えている。


真弓が昨日ヘンなことを言うもんやから、ほんまに自分がホモになったんちゃうかと心配になるくらい、俺は切実にシーナに会いたくてたまらなかった。








一面ガラス張りの開放的なロビーに出ると、待合ソファーのほうで高校生らしきグループが何組か固まって騒いでいた。


誰かの応援に来ているらしく、手に手に何か文字の書いてあるカラフルなうちわを持っている。


俺とシーナは高校が違うから、ああいう友達の応援団みたいなもんは一切ない。


前までは必ず真弓が見に来てくれてたけど、今はもうそれも望めなくなってしまった。




別に……俺はそんなんはもうええねん。
これからもシーナと漫才が出来ればそれで――――。




俺は自分自身にそう虚勢を張ると、受付の横にあるキオスク風の売店で、出来るだけパワーの出そうなドリンク剤を二本買った。



シーナがK大に合格しててもかまへんやん。


この際それは二の次や。


俺はこのコンクールに絶対、絶対、優勝して、今日こそシーナに言うねん。


「これからも、俺と漫才やってくれ――」って。






「――――うしっ」



気合いを入れてドリンクを飲み干した時、正面玄関前のアプローチを、こちらに向かって走って来るシーナの姿が見えた。


ずっと待っていたくせに、その顔を見た途端、キュッと心臓が縮み上がるような奇妙な緊張感が俺を襲う。


いつもと変わらないポーカーフェイスのシーナ。


無造作に巻いたバーバリーチェックのマフラーに、ウールのショートコート。


なんでもないノンブランドのデニムも、シーナがさらりと履くと不思議と上品に見える。





改めて言うけど、俺はほんまにホモではない。



それは断言できる。



せやけど、何故かシーナの姿は見ていて飽きひんというか、むしろ癒されるというか……つまり俺は、アイツの性格だけやなくて、顔や雰囲気も好きなんやと思う。


せやから一緒にいても居心地がええし、二人で舞台に立っている時も誇らしく感じられる。


他のコンビはどうかわからへんのやけど、コレって相方として結構大事なことなんちゃうかと俺は思っている。



重いガラス扉を押して、シーナがロビーに入って来た。


「おぉケンタ!スマンスマン―――寂しなかったか〜?」


無意識のうちに小走りで出迎えた俺の頭をワシワシと撫でるシーナ。


その嬉しそうな笑顔が変に眩しく見えた。


「――ええい、やめや!俺は子供か!」


照れ隠しの軽いツッコミ。


「――いや、お前の場合子供というより、もはや嫁やな。最近俺を見る目に『本物の愛』を感じるもん」


「――アホか!よう言わんわ」


俺達の間でこういう馬鹿馬鹿しい会話は日常茶飯事。


いわば今後の漫才用のネタの素みたいなもんや。


でも今日は変に意識しすぎているせいか、我ながらツッコミがぎこちない。


「俺が欲しかったらいつでも抱いたるでぇ?――今晩あたりどうや?」


俺の繊細な気分など全く無頓着なシーナは、頭を撫でていた手を肩にまわして俺を抱き寄せようとする。


こういうじゃれ合いから結構おもろいネタが生まれることもあるから、ボケ担当のシーナは日頃からホモっぽいスキンシップにあまり躊躇がない。


真弓が変な誤解をしたのも、恐らくそのせいやと思う。


「もーやめや!しつっこいなぁ」


いつもの調子でパッと払いのけてしまったが、一瞬感じたシーナのぬくもりに内心ひどくホッとしてる自分がいて、俺はなんだか胸がザワザワした。



『俺……ほんまにコイツにやったら抱かれてもええんちゃうか――――?』



などというアホな考えが一瞬頭をよぎった。




―――いやいやいや、アカンアカン!



そもそもシーナには俺の大好物のおっぱいが付いてへんし。




―――いやまて。ほんならシーナに真弓みたいなおっぱいが付いてたらどうやろ?


でも………そうなったら、俺がシーナに抱かれるっちゅうよりむしろ俺がシーナを抱く感じになるわなぁ。


その場合、チンコは………





「K大―――受かってたわ」






突然に、しかしさりげない口調で、シーナが試験の結果を告げた。



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