投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

続・せみしぐれ〜color〜
【その他 官能小説】

続・せみしぐれ〜color〜の最初へ 続・せみしぐれ〜color〜 16 続・せみしぐれ〜color〜 18 続・せみしぐれ〜color〜の最後へ

続・せみしぐれ〜color〜(後編)-12

「…疲れた?」
「ううん、大丈夫」

じゃあ、ちょっと待ってて――と、彼は、少し先に見えてきた射的の出店へ、小走りで行ってしまった。
楽しみにしていたおもちゃをみつけたかのようなその笑顔は、やんちゃないたずらっ子のようで、周囲で走り回る小学生と大差ないように見える。

…もう、大丈夫だね。
たった3週間前には、話すこともままならないくらい心を病んでいたあの相模くんは、今はどこにもいなくなった。
闇を克服し、再び自分の力で日々を歩き始めた彼。
その姿が――今の私には眩しくて切なかった。

「どれが欲しい?」
満面の笑みを浮かべた少年は、出店の軒先で追いついた私を手招きし、店の奥に並べられた景品を指さす。
おもちゃの銃に弾を込め構える様は、何だか精一杯に格好つけてるみたいで笑ってしまう。

「…欲しいって言ったら、何でも叶えてくれるの?」
「そっ…んなの、取ってみなきゃわかんねぇよ!」
ちょっと意地悪したくなって、下からふいに顔をのぞき込んだら、露骨に視線を逸らされてしまった。

『欲しいもの』
…私が、欲しいのは――。

「どれがいい〜?」
自分も狙っている景品があるのか、真剣な横顔で再び問いかける相模くん。

「…ねぇ」
聞いてもいい?
触れても…いい?

「――えっ…」
小柄な私は、背の高い彼のその肩に手を伸ばし、爪先立ちで耳元に唇を寄せる。

だって。
この喧騒の中じゃ、こうしなきゃ聞こえないでしょ?

…これは、言い訳。

唇が、微かに彼の耳を掠めた。

「16歳の男の子…って、毎日どんなこと考えてるの…?」

――パンッ!!

「おーぃ、兄ちゃん!全然外れちゃってるよ〜!」
突然に、出店のおじさんの笑い声が響いて。
我に、返った。

(な、何を言ってるの私はっ!?)
自分でもよくわからない行動に、飛び退くようにして相模くんから数歩離れる。

「…あ、あれ?」
隣を見れば、同じく夢から覚めたような呆けた表情の相模くんがいて。
どうやら、一発目の弾は大きく外れてしまったみたいだ。

「ご、ごめんね!集中力削いじゃったよね」
「あ…いや、大丈夫」
こちらを見ずに、彼は再び銃を構えた。

ところが。
その後は、どうしたものか散々な結果に終わり…。
欲しいものどころか、お互いに気まずい空気のまま、帰り道もほぼ無言の展開となってしまった。



続・せみしぐれ〜color〜の最初へ 続・せみしぐれ〜color〜 16 続・せみしぐれ〜color〜 18 続・せみしぐれ〜color〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前