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魔の子
【ファンタジー その他小説】

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魔の子-4

「ア…ル…さん…?」
驚きに目を見開くリア。
「そんなこと…そんなこと言うな。リアは誰にも殺させないから…」
アルはそう言って、リアの細い体を一層強く抱きしめる。
「うん…ありがとう…アルさん…」
泣いていたリアの顔に笑顔が戻った。その無垢な笑顔は、アルの頭に先ほどの会話を思い出させる。

「なんだじーさん、言ってくれ…」
仰向けに倒れているアウルに、立ったまま聞くアル。アルの拳を受けた腹部を押さえながら、アウルが話し出す。
「魔の子というのは、魔術師ギルドの協力を元に作られたホムンクルスなんじゃ…。殺された時、相手に強い呪いをかける特別製のな…」
ホムンクルス。その言葉に、少し思案するような仕種をしてアルは叫ぶ。
「ホムンクルスって、あの人造生命体のことか!!」
「あぁ、魔術師ギルドの至高の研究じゃ」
「他のギルドへの干渉は、この国の禁忌じゃねーか!!」
アルは畳み掛けるように質問する。その顔からは驚きと怒りの感情が読み取れた。
逆にアウルの顔には悲しみや無念さといった表情が浮かんでいた。
「本当に、本当にすまなかった…」
仰向けのまま右腕で目を覆い、謝罪の言葉を言い続ける。後悔などから出る涙を見せまいとしているのであろう。
少しの沈黙を介してアルが口を開いた。
「もし…俺が生き延びたことがバレたら、じーさんはどうなるんだ?」
「殺されるだろうよ…」
間髪を入れずにそう答えるアウル。痛みが引いてきたのか、呼吸が整っている。
「じゃあ…リアは?」
自分の足元の辺りを見ながら呟くようにアルが聞く。
「同じじゃ。ギルドの者に殺されるじゃろう…」
「……」
アルは地面を見つめたままだ。
「魔の子は…どの道死ぬ運命なのじゃ。所詮作られた命なのじゃからな…」
 アルは地面に横たわるアウルに視線を移す。
「なら俺が守る」
強い決意が感じられる声だった。それにアウルは、暗く静かな声で答えた。
「魔の子の寿命は30時間しかない…あと2時間も生きられんじゃろうよ……」

アルは迷っていた。手をつないで一緒に歩いている少女、リアのことだ。
『あと2時間も生きられんじゃろうよ……』
先程のアウルの言葉が頭を埋め尽くす。
(最後を見届けるか、それとも…)
アルは横目でリアを見てから心の中で続けた。
(リアを殺して、その呪いで俺も死ぬか…)
冗談ではなかった。


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