投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

異界幻想の最初へ 異界幻想 172 異界幻想 174 異界幻想の最後へ

異界幻想ゼヴ・ヴィストラウレ-20

 神機召喚を解除した一行は、何とも言えない後味の悪さを感じていた。
「敵神機があんなに弱いのばっかだったのに、一個中隊と神機チームが怪我人続出か……どうなってやがる?」
 頭をばりばり掻きむしるジュリアスを見て、ティトーは首をかしげる。
「……発想の転換が必要かもしれないぞ」
「あたし達が強くなった、って事?」
 フラウの声に、ティトーは頷く。
「俺達、より正確には深花が強くなったんじゃないかと思う」
「ふへ?」
 切り株に腰掛けた深花は、自分を指差した。
「修業を積んで、まあその……色々と『耐久力』も増したしな。ここに来た当初より、ずっと安定感が出たのは疑いようのない事実だろ」
 耐久力という言い回しに、ジュリアスは噴き出すのを堪えた。
「これなら、魔導を教えても大丈夫かなぁ」
「まだいらないんじゃない?」
「俺は早い方がいいと思う。戦闘が激化したら、悠長に学習させる時間はないだろ」
「……それもそうね」
 一体何の話をしてるのかと戸惑う深花に、ティトーは言う。
「目が回復したら俺達神機乗り最大の醍醐味、魔導の扱いを学んでもらう」
「話飛ばしすぎ。そもそも、魔導が何なのかの説明からだろ」
 ジュリアスの声に、ティトーが頭を掻く音が聞こえた。
「そうだった。見せた事があるから覚えているかも知れないが……ジュリアスの剣が炎を纏ったり俺が手も触れずに槍を操ったり、たまに不可思議な現象があったのは目撃してるはずだ」
 深花は頷いて、それらを覚えていた事を示す。
「簡潔に言うと、あれが魔導だ。リオ・ゼネルヴァからラタ・パルセウムを覗くのにも使われてる技術で、通常の人間は使えない……使うにはある種の才能と、相当な修練が必要になる。自在に使える頃にはよぼよぼの爺婆なんてのは、よくある話だ」
「俺達は、そのスペシャリストだ。最高位に上り詰めた時点で、無制限の使用を許諾される……自分の属性に関してはな」
「魔導士の力はあたし達には及ばないけれど、相性による限界がある代わりにどの属性も使える。彼らは言わばエキスパートで、一長一短って所ね」
 ごく、と深花は唾を飲み込んだ。
「それで……土の属性は」
 炎は攻撃。
 水は防御。
 風は補助。
 それぞれの一番優れている点から考えれば、おのずと答は見えてくる。
「補給、もしくは回復……でいいんですね?」
「……そうだ」
 正解を導き出した深花の声に、ティトーは頷いた。
「神機チームの特性を考えると、あまり……生身で扱う分は俺達には必要ない。けれど、他者に使う分はかなり効果的だ」
 それを聞いた深花は、首をかしげた。
「この目を治すのには、その能力を使うわけにはいかないんですか?」
 他は健康でも、目が見えない。
 ただそれだけで、三人に多大な迷惑をかけているのを肌で感じる。
 早く、目を治したい。
「止めといた方がいいな」
 ジュリアスが、ぼそりと言った。
「バランフォルシュが返した物にバランフォルシュの力で干渉するなんて、おかしな風にねじれた力の発生を招きかねない。魔導を扱った事のないお前がそれを御せるとは到底思えないし、まだお前の目が見えないのはバランフォルシュの思惑のせいだと俺は思うけどな」
「言っておくが、君が負傷したのはジュリアスが短気を起こしてしまったせいだ。そして俺達は、君の世話を負担にも面倒にも思っちゃいない。そんな事を考える余裕があるなら、早く治るよう治療に専念しな」
 ティトーはそう言って、深花の頭をくしゃくしゃにする。


異界幻想の最初へ 異界幻想 172 異界幻想 174 異界幻想の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前