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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・ヴィストラウレ-2

「今から入ります。データ採取、よろしくお願いしますね」
 一声かけてから、深花は地を蹴る。
 バランフォルシュの力が、深花を捉えた。
 バランフォルシュの中に導き入れられ、その背が閉じられる。
 暗闇の中に封じられたのは、一瞬だった。
 尾てい骨の辺りに軽い衝撃が走り、神経が接続される。
「……!」
 目から流れ込む情報は自分が見ているはずの内部……白い筋肉ではなく、外側の景色だった。
 見ているはずの物を見ていない違和感に、思わず目をこする。
『すぐに慣れる。あまり変な動きをすると、他の人間がビビるぞ』
 脳内に、ジュリアスの声が響いた。
 がちがちに他の領域をガードしているので、声以外は聞こえない。
『今の所、変な感覚なんかはねえな?』
「うん。ただ慣れないだけ」
『機体を軽く動かして、慣らしておいた方がいい。何があるか分からないからな』
 同じく他の領域をがちがちにガードしたティトーの声に、深花はバランフォルシュの四肢を動かしてみる。
 腕を前に突き出そうとすると、バランフォルシュの腕が動いた。
 周囲に迷惑がかからないよう気をつけながら、足踏みをしてみる。
 そうやって機体を動かすうち、違和感は消えていった。
『じゃあまずは、得物を召喚してみろ。いちおうお前には剣術を教えたが、槍とか弓が得意武器でした……じゃどうしようもないからな』
 そう言ったジュリアスが、一つのイメージを送ってきた。
 そのイメージに従い、深花はバランフォルシュの武器を召喚する。
 バランフォルシュの手には、二つの武器が握られた。
 超重量の鎚と、幅広の剣。
『剣と鎚か。どうやら、教えた事は無駄にはならないようだな』
 深花は鎚を戻し、剣を振るってみた。
 機体の大きさから考えて相当な重量があるはずだが、まるで重みを感じない。
 これなら、長い時間振るっても疲労はないだろう。
『つーか生身でこの剣圧は恐いから、剣振るうのは遠慮してくれ』
 ちらりと周囲に視線を走らせると、居合わせた人間達はほぼ例外なく顔が引き攣っている。
 素振りを止めて剣を還すと、ザッフェレルの声がした。
『では、ここからが肝要な所である。三人とも、神機に搭乗せよ』
 いよいよ、本番だ。
 ごくりと唾を飲み込み、呼吸を整える。
 三人がそれぞれに神機を呼び出し、乗り込んだ。
「今は、まだ平気……動いてみてください」
 沈黙していた三機は、それを聞くと慎重に間合いをとり始めた。
『ジュリアス。ちょっと付き合え』
 カイタティルマートの細剣を召喚しながら、ティトーが言う。
『おう』
 バランフォルシュのそれより幅広の剣を召喚し、レグヅィオルシュは武器を振るい始めた。
「っ……!」
 ぴく、と指が引き攣れる。
 ただそれだけの事でも、三人が息を飲むのが分かった。
「……まだ大丈夫。何もないです」
 じっとりと嫌な汗が滲むのを感じながら、深花は言う。
 初代が命を落とす事になった苦痛。
 それは、まだ訪れない。
 本当は震えて、命乞いを叫び出したいくらいに恐い。
 泣きじゃくって嫌だと叫べば、たぶん三人は許してくれるだろう。
 だけどそんなみっともない真似をするのは、プライドが許さない。
 自分を助けようと人一人を殺めてしまった男への恩義に報いるまでは、泣き言など口が裂けても吐いてはいけない。


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