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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・ヴィストラウレ-19

 レグヅィオルシュに乗った時の感覚は、すっかりお馴染みになったと表現してもいいくらいにこなれたものだった。
 ジュリアスと体が溶け合っているのも、すっかり慣れてしまった。
 しかし、神機に乗り込むと素っ裸になるのはどうにも慣れない。
 その時々によってくっつき方に差異があるが、今日の体はジュリアスの左半身を覆うように癒着していた。
 左肩に頭をもたせ掛けると、ジュリアスはちらりと深花を見る。
「……レグと繋がってるなら、外は見えるな?後方の警戒を頼む」
「うん」
 深花はレグヅィオルシュを通じて、外の景色を眺める。
 森林地帯というだけあって樹齢数百年と言われても納得できるほどの大木が立ち並び、足元は落ち葉や若木で地面も見えない。
 里山でもないからそれらが剪定されているわけもなく、見通しはかなり悪かった。
『今の所、敵影はなしか。どこから襲ってくるのやら』
 ティトーの声に、フラウが笑う。
『同じ水の神機ですもの。あたしにはよく分かるわ』
 笑い声は、緊迫感に溢れた警告に変わった。
『前方に機体を確認。一人一機で、十分かしら?』
「小手調べ、って所だな。よぅし、行くぞ!」
 一声吠えて気合いを入れると、ジュリアスは歩き出す。
 木陰に潜んでいた神機が、得物を手に襲撃をかけてきた。
『その命、もらったぁ!』
 流れるような動きで、レグヅィオルシュは得物を召喚する。
 そして何気ないとも取れる仕草で、敵神機を一刀両断した。
「ごちゃごちゃうるせぇ。次」
『おーおー。容赦ないねぇ』
 ジュリアスを揶揄するティトーだが、カイタティルマートは対戦した敵神機の頭を見事串刺しにしていた。
 引き抜いた細剣を振って血糊を飛ばし、剣を構え直す。
『こっちも終わったわよ』
 フラウと対戦した相手は、びしょ濡れになって昏倒していた。
「溺死はタチ悪いだろ……」
 ジュリアスは呟き……ひょいとその場を飛びのく。
 地面から突如として、二本の腕が伸び上がる。
「おっと」
 間髪入れず炎を召喚したジュリアスは、その腕を焼き尽くした。
「そのまま埋まってろ」
 深花が警告してくれなかったら、足を掴まれていたかも知れない。
『……いやに手応えがないな』
 カイタティルマートが周囲を見回しているのが見える。
『確かに……また来たわ』
 今度は五体の神機が襲撃をかけてきた。
「体もあったまらねえなぁ……もっと気合い入れてきやがれ!」
 得物を振り、ジュリアスは一体を切り伏せる。
 返す刀でもう一体と切り結びつつ、二人を順繰りに見遣った。
 風の力で相手を翻弄し、弄んでいるカイタティルマート。
「うっわ。いきなり殺ったか」
 神機の首部分を槍で大木に縫い付け、とどめを刺しているマイレンクォード。
「うぅ……!」
 深花の体が、ぴくぴく震える。
「大丈夫か?」
「ん……まだ平気。行けるよ」
 答える声はしっかりしていて、本当に平気そうだ。
「……耐性ついたなぁ」
 初めてレグヅィオルシュに乗った時はエネルギーを吸われる度に大騒ぎだったのにな、と思う。
 そんな呑気なおしゃべりをしながら、ジュリアスは切り結んでいた相手にとどめを刺す。
「しかし、手応えがなさすぎる……どういうこった?」
「前任者が怪我してしまうほどの強力なやつが、どこかに伏せてるって事じゃないの?意味も目的も分かんないけど」
 その言葉に、ジュリアスは少し考え込んだ。
 意味も目的も分かんないにはまるごと同意だが、局所的に異様な鋭さを備えた深花の意見にはたして正解が含まれているのだろうか。
 天敵の行動様式に思いを巡らせる事ほど無駄な作業もないので、ジュリアスは気を取り直して状況に集中する。
『……え?』
 面食らったフラウの声に、三人は注意をそちらに向けた。
『どうした?』
『反応が……消えたわ』




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