金色の双眸-3
「さっきの誰ですか?」
「ゼビアの騎士団長スオウ」
ゼビアの騎士団とは、王と民衆を守るための組織で、団長をトップに近衛、隊長、団員という構成になっており、近衛は王の警護、隊長は30人単位の団員をまとめ、国中に配置されている。
「その団長とアースが何でまた……」
「聞いてないかい?アースは元騎士団隊長だよ」
「はい?」
聞いてない。
「別に隠してるワケじゃなくて、話す機会が無かっただけだろうけど……まあ、あの2人は団長の座を争った事があってね」
当時、23歳と若すぎたが、強力で巧みな魔法の使い手であり、体術、剣術も優れていたため、カリスマ的存在となっていたアースを周りの人間が無理やり次期団長候補に仕立て上げた。
そして、年齢、技術、信頼性など含めて次期団長候補ナンバーワンのスオウと勝負するはめになったのだ。
しかし、自分の意志ではなく周りに持ち上げられて団長になるのなどまっぴらだ、とアースは騎士団員にあるまじき行動をとった。
敵前逃亡。
試合当日、アースは闘技場に行かず、そのまま辞表を出し姿を眩ました。
「……で、魔導師の認定試験に合格した後ここで講師をしてるのさ」
「はぁ」
歩きながら説明されたキャラはやっぱりまだ知らない事だらけなのを痛感する。
「まぁ若かった分トラブルも多かったし、騎士団を円滑にまとめるのにはスオウの方が向いてるのはわかりきってた事だから、自ら身を引いたって所かな?」
だからといって辞めなくても良かったんじゃ?と首を傾げるキャラにベルリアは苦笑いして続ける。
「単に『人の事を周りの人間が勝手に決めるな』という事を示しただけだろうね」
突飛な行動は昔からで、今も変わらず健在だ。
「スオウはその時、試合が出来なかった事が悔しかったらしくて会う度に勝負をつけようとしてね、これが互角なもんだから決着がつかずに長引くんだよ……」
ベルリアは大きくため息をつく。
そんな話をしながら歩いていると実技場についた。
そこでは既に2人の勝負は始まっており、騒ぎを聞きつけた暇人達が外野から声援を送っている。
「うおおぉぉっ!」
大きなバスタードソードを振りかぶって突進してくるスオウに対して、アースは普通のロングソードを構えている。
「来い!筋肉ダルマ!」
嬉しそうな顔をしたアースが挑発しつつ1歩横に移動した。
そのすぐ脇に振り下ろされたバスタードソードは地面に突き刺さる寸前でグイッと捻られ跳ね上がる。