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凪いだ海に落とした魔法は
【その他 官能小説】

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凪いだ海に落とした魔法は 3話-8

「今年は猛暑らしい。八月になれ平均気温が3℃も上がるってさ。信じられないね、まったく。無神論者でも神を恨みたくなるよ」

ノーリアクション。

「ある子供が母親に訊ねた。神様は男なのか女なのかと。神の神秘性を損なうようなことを教えたくない母親は、どちらでもあるのよと答えた。次に子供は、神様が黒人なのか、それとも白人なのかを訊ねた。やはり母親はどちらでもあるのよと答えた。子供は思った。マイケル・ジャクソンはやはり神様だったのだと」

ノーリアクション。

「アダムは神様に訊ねた。何故あなたはイブをこんなにも美しく創られたのかと。神様は、お前がイブを愛せるようにだと答えた。次にアダムは何故イブをこんなにもグラマーな体型にしたのかと訊いた。やはり神様は、お前がイブを愛せるようにだと答えた。最後にアダムは、では何故イブはこんなにも馬鹿な女なのかと訊ねた。神様は答えた。イブがお前を愛せるようにだと」

ノーリアクション。

「やれやれ」
ノーリアクション。
僕は目の前にすらっと伸びた日下部の長い脚に目を遣った。校則違反のスカート丈。触ればピンと弾かれそうな張りを感じさせる太股が、照り付ける日差しを艶やかに跳ね返していた。直線的で、無駄な脂肪を1グラムも感じさせない脚線美。素晴らしい。

「これぞ神の成せる業だ」と僕は感嘆して言った。
「さっきから何言ってるの? 神様がどうとかぐちぐちさ」
日下部は眉を潜める。
「おかえり。やっとこっちの世界に帰ってきたね」
「私は神様なんて信じないよ」
「ああ、そう?」
「ところで、志野さあ」と彼女が言った。もう君は付けないことにしたらしい。
「何か?」
「お金、返さなくていいよ」
「は?」
「だから、3千円はくれてやるって言ってるの」

僕は日下部の顔をまじまじと見詰め、「何よ」と言われて肩を竦めて見せた。
「その代わり――とか言い出しそうな雰囲気だと思って」
「よく分かってるじゃない。その代わりに、沢崎とかいう奴に会わせなさい」

高圧的な物言いだが、挑戦的ではなかった。有能な上司の的確な命令のようで、思わず背筋が伸びそうになる。
「会わせなさい」という言葉は、じっくりと会談できる場をセッティングしろ、という意味だと捉えたほうがいいだろう。会うだけなら僕の力は必要ない。

「何をする気?」と僕は訊ねた。
「直接会って文句を言いたい。別に荒事にしようなんて思ってないよ。それ以外にも言いたいことはあるけれど、それはまあ、実際に会ってみてから言うかどうかを決める」
「何か含みがある言い方だね。何か、歓迎できない事態が起こりそうな感じだ」
「そう? 気のせいでしょう。仮にそうだとしても、それをあなたに教える義務は私にあるの?」
「ないですね。多分」
「なら会わせなさい」

沢崎拓也と日下部沙耶。この二人を引き合わせたらどうなるのだろう。ハブとマングースが微笑ましくじゃれ合う姿は想像し辛いが、そうはならないと誰が決めたわけでもない。

頭の中で警鐘が鳴らされた。危険な提案だ。しかし、それを無視して二人を会わせてみたいという好奇心も同時に沸き上がる。ぐらぐらと天秤が揺れる。


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