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凪いだ海に落とした魔法は
【その他 官能小説】

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凪いだ海に落とした魔法は 3話-47

「日下部は、本日二度目の初体験だね」と僕は言った。
「三度目」
「え?」
「こうやって誰かと遊びにでかけるのも、初めてだから」

日下部が問題発言をしたので、僕と沢崎は唖然とした。

「それは、なんとまあ」と沢崎が苦笑した。
「じゃあ、次は四度目だ」と僕は言う。
「次?」
「そう。今まで君がしてこなかった初めての経験を積み重ねていけば、いつか振り返ったときに、楽しかったと思える日がくるかもしれない」

空白の時を取り戻すことはできない。僕らにできることは、ただ新しいものを重ねていくことだけなのだろう。

「そう、そうね。まあ、悪くはないかもしれない。初経験の蓄積かあ。それがあなたの計画だったの?」

純粋な目で彼女が訊いたので、僕は素直に応じる。

「今思い付いた」
「あ」と彼女は口を開いて「そ」と木で鼻を括ったように言う。

凡庸なマンネリズムの風景画みたいに平和な青空。僕たちはその下で、ゆっくりと怠惰な時間を謳歌するように煙草を吸った。なかなか悪くない時間じゃないか、と僕は思った。

「あーところで、初経験と言えばさ」と沢崎が何でもない話題を言い出すように口を開いた。

「日下部って処女?」

そんなデリカシーのないことを口にして、日下部から見事なローキックをもらう沢崎。信じられないことに、少しだけ頬が紅潮している。実に貴重な絵だ。
そんな質問をされたのも、きっと初めてだったのだろう。
「四度目」と僕は笑いながらカウントするのだった。




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