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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・ラショルト-6

 山ほどいる下級兵士達に対する理不尽な振る舞いは、噂を聞いただけでさもありなんと思わせる不快な男だ。
 入隊したてで年端もいかないジュリアスに惨敗を喫してからは少しおとなしかったはずなのに、またぞろ悪い虫が疼き始めたらしい。
 ラザッシュが何故にアパイアへ目をかけているのか理解不能だが、恩を仇で返された今回の件でもなお見捨てないとしたら……何か特別な感情でも抱いているとしか思えない。
「とにかく!」
 拳を手の平に打ち付けて、ジュリアスは言った。
「クゥエルダイドとアパイアには要注意だ!ティトー、抗議文書を作るぞ!」
「だな……ところで深花」
 気まずそうに、ティトーは言った。
「話せる範囲でいいから教えてくれ。クゥエルダイドに何をされ……いや、簡単に書かないと抗議文書の体裁が出せないんだよ」
 ティトーは慌ててそう付け加え、ジュリアスの怒りを抑える。
「そういう事でしたら」
 僅かに肩をすくめ、深花は不快な出来事を思い出す。
 が、説明は途中で止めた。
 顔色が怒りでどす黒くなっていくジュリアスを見たら、とてもではないが続けられるわけがない。
「あ……あの、ジュリアス?あくまでもこれは抗議文書を作るために供述してるんであって、セカンドレイプとかそういうのじゃ……」
 やんわりたしなめると、ジュリアスの顔色はますますどす黒くなった。
「分かってるけど不愉快なだけだ」
「ぶち切れて殴られそうで恐いわよ」
 しごくまっとうな感想を吐くと、深花はティトーを見た。
「これ以上話したらジュリアスが爆発しますけど……」
「だな。まあそんだけ聞ければ十分だろう……足りないのはジュリアスがいない所で聞かせてもらうさ」
 それだけ言うとティトーはザッフェレルから筆記用具を借り、文書の素案を書き始めた。
「こんな所かな……ザッフェレル、認可を頼む」
 そう言ったティトーは、一瞬険しい目をした。
「アパイアにしろクゥエルダイドにしろ、反省は皆無だろう。クゥエルダイドのような手合いは火を点けられたらしつこいだろうし、アパイアはもっと質が悪そうだ」
 ずっと黙っていたフラウが、ぽつりと呟いた。
「伍長は一体何を望んでいるのかしら?」
 ティトーは怪訝な表情を浮かべてから、すぐに納得した。
 フラウにとって今回深花の身に起こった強姦紛いの出来事は、ジュリアスに引き合わされる前までの彼女の日常なのだ。
 だから深花にとって何が悪くて何が恐かったのか、今までじっくり考えていたのだろう。
「目の前に若くて可愛くてしかも非力な女がいれば、己の欲望を満足させるためにその全てを踏みにじろうとする局部と思考が腐った野郎はだいたいどこにでもいる。そういう奴に限って自分の思考の腐れ具合に気づかないから、そこにいるのが一人の女性じゃなく好きなように自分の股間を満足させるための肉壺みたいな考えを平気でしやがる。つまり……アパイアは」
 ざくざくと伍長を切って捨てたティトーは言い淀み、ジュリアスを一瞥した。
 クゥエルダイドが深花に対して振るった暴力を聞かされて頭が沸騰しているため、言葉を選ぶべきかと思う。
 しかし未だ平和と親愛が思考中枢を占拠している深花のため、注意喚起としてあえて言う事にした。
 平和も親愛も、一市民ならば素晴らしい主義だろう。
 だが、軍人としてはあまり褒められない。
「深花。君を第二の遠征先要員……平たく言えば、性奴隷にしようとしていると思う」
 それを聞いたジュリアスは、ますますどす黒くなるかと思いきや……顔色が普通に戻った。
「そんな事、俺がさせねえよ」
 どうやら、頭を沸騰させていたらまずい事態だと気づいたのだろう。
 顔つきも、冷徹な戦士のそれに切り替わっている。
「頼もしいな」
 ティトーは僅かに肩をすくめ、深花に言った。
「先日からの襲撃といい今回のクゥエルダイドとアパイアといい、身辺には気をつけるように。絶対に一人で行動するなよ」




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