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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・ラショルト-23

「ジュリアス少尉は曹長に対しある個人的感情を抱いておりますので、その分怒りは増大したのでしょう。それと……曹長との不適切な関係を望む人間がもう一人いまして」
 ティトーは、もう一度宝石を示す。
「曹長はこの後気絶させられますが、バランフォルシュは気絶させられない。音声のみですがその人間が登場しますので、ぜひお聞きいただきたい」
 また宝石を握ると、男の声が聞こえ始めた。
『首尾よくいったようだな』
『あんたか』
 しゅるしゅると、布擦れの音が聞こえる。
『準備は完了。後はこいつが目を覚ますのを待つだけだ』
 その後、ロープのきしる音がした。
『いい格好だな。裸はお前の趣味か?』
『暴れる女を脱がすのが面倒なだけさ』
 しばし沈黙が落ち、クゥエルダイド以外の声が言った。
『なあ、味見してもいいか?』
『何を?』
 クゥエルダイドの声は平静で、それがかえって迫力を増している。
『木の根の提供は感謝してるが、それで俺がここまで骨を折った代償には足りないと思うが』
『む……』
『俺が飽きるまでは任せてくれるんだろ?』
『しかし、こんな若い女は久しぶりでな……』
 食い下がる男に対し、ちっとクゥエルダイドが舌打ちした。
『俺に譲って欲しいならもう少し協力しておくんだったな、アパイア』
 男達が、息を飲んだ。
 クゥエルダイドが協力者を呼んだのは、疑う余地のない事実である。
「公的には残されていませんがアパイア伍長は五年前、軍の悪しき伝統にのっとって一人の少年兵を支配下に入れようとした事があるそうです」
 何気なさそうに、ティトーはそう付け加える。
「アルコーキル少佐。先だってそちらに送付しておいた抗議文書、お読みになっていただいているものだと思いますが?」
「ん?ああ……」
 ぼやけた返事に、見ていなかったのかこの野郎とティトーは心の中で罵った。
 よその部隊から送られてきた抗議文書を後回しにするとは、怠慢にも程がある。
 そう考えてから、ティトーは思い直した。
 先程のアルコーキルの発言と突き合わせると、問題が見えてくる。
 深花が、女だから。
 女だから軽く見られ、後回しにされた。
 抗議文書の閲覧が後回しにされたからクゥエルダイドの処罰が遅れ、深花に実力行使された。
 そんなティトーの思考に気づいたガルヴァイラは、渋い顔をする。
 アルコーキルから見えた歪みは、好ましい類の物ではない。
 神機チームに所属する人間達の絆の強さは誰もが知る所であり、特に今のチームは行方不明だったミルカの帰還により通常よりずっと濃密な関係を持っている。
 そんなチームをないがしろにしたアルコーキルの行動……ジュリアスに知れたら闇討ちの二つや三つは覚悟しておかないといけないだろう。
 ガルヴァイラに、それを止める気はない。
 アルコーキルより有能で、女だからとたかを括らない思考のバランスが取れた士官はありふれていると表現してもいいくらいたくさんいる。
 男だろうが女だろうが、未熟だろうが熟練していようが、そのような考えはいざという時の判断を誤らせる可能性が高い。
 よほどの人手不足ならともかく、判断を間違えそうな部下をわざわざ使い続けてやる義理はガルヴァイラにないのだ。
 ただし、何かするならティトーに計画を立ててもらって誰にもばれないようにしてくれと思う。
 絶縁中とはいえジュリアスは大公爵公子の地位を保持しており、廃嫡になったわけではない。
 何もなければ将来は国の行く末を担う事になる、超がつくほどの重要人物なのだ。
 重要すぎて対外的にはかえって顔が知られていないが、それでも大公爵公子を裁くなんて面倒事は金輪際ごめんである。
「どうやら、ご覧になっていただいてはいないようですね」
 じっとりした怒りを含んだティトーの声に、ガルヴァイラは我に返った。
「結構。少佐、どうやらあなたはこの場で己の恥をさらけ出したいようだ」
 女が被害者だからと甘く見て手を打つのが遅れたアルコーキルの不手際さえなければ、クゥエルダイドが死ぬ事もジュリアスが罪を犯す事もなかったろう。
「受けて立ちますよ……潰してやる」




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