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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・ラショルト-22

 抵抗のために力が込められていた手は、いつしか口づけをねだるように指を絡め合わせている。
『ん』
 一際高い音を立てて舌を吸うと、クゥエルダイドは唇を離した。
『は……』
 唇が離れると、深花は震える息を吐く。
『っへへ、ずいぶんおとなしくなったな。反応も、立派に女だ……』
 首を唇で探ると、深花の唇から小さく声が漏れた。
『あ……いや……』
 口調は今までと全く違い、甘え媚びた響きを含んでいる。
『あぅ……』
『ずいぶん仕込まれてるな。いい感度だぜ』
 クゥエルダイドは音を立てて柔肌に吸い付き、その首に赤い痣を咲かせた。
『キスだけでこれなら、しばらく楽しめそうだ』
 いったん唇が離れたせいで、閉じられていたまぶたがうっすら開く。
 唇をいやらしく光らせたクゥエルダイドが、また視界を占拠した。
『飲め』
 もう一度唇が重なり、舌が押し込まれてくる。
『ん……!』
 ごく、と何かを飲み込んだ音がした。
『も……もういいでしょ!?こんな事して……ひゃ!』
 びく、と深花が震える。
 クゥエルダイドの頭の位置からして、耳を食まれたか息を吹き掛けられたかしたらしい。
『馬鹿言うんじゃねえ。キス一つで女をモノにできるんなら、男は苦労しねえや』
 深花の顔を覗き込むクゥエルダイドの表情は欲望が剥き出しというより、むしろ心配そうに見えた。
 切なげにすら見えるその表情に、深花は驚いて動きを止める。
『く……』
 声を出そうとしたらしい深花の動きが、止まる。
『ようやく効いたか』
 切なそうな表情が一転して、今までのような欲望丸出しの野卑な顔に取って代わる。
『痺れ薬が効きにくい体質なのか?けっこう時間がかかったな』
 好き勝手な事を言いながら、ずるりとくずおれた深花の体を抱え上げる。
『俺がここまでしつこいのはお前に対する恋愛感情なんかじゃねぇ。純粋に、お楽しみに耽りたいだけさ……おとなしくしてりゃいい目も見せてやんよ』
 ティトーは宝石を握り、映像を止めた。
「何と言うべきか……」
 黙って全てを見たガルヴァイラが、困った声で呟いた。
「自分の子供より若い娘さんのこんな姿を見せられると、非常に申し訳ない気分になるものだな」
 省略できなかった艶姿に、その場にいたティトー以外の男達に微妙な雰囲気が漂っている。
「中将殿は、ご息女がおありでしたな」
 ザッフェレルが、ボソッと言った。
「二人ね。どちらもすごく可愛いものだ……ザッフェレル、君もそろそろ身を固める決心をつけたらどうかね?」
「吾輩を見て驚かない女性がいるのであれば、前向きに検討しておきましょう」
 恵まれすぎた体格は他者を威嚇するのに役立ちこそすれ、初対面で親近感を抱かせるのに成功した例はない。
 別にそれだけが理由ではないが、ザッフェレルはまだ結婚していなかったりする。
「しかし、ティトー……」
 何故か頬を赤らめているティトーを見て、ザッフェレルは怪訝そうな顔をした。
「あんにゃろうの弁護のために深花の記憶を借りたのはいいんだが、記憶を再生すると深花が体験した感覚を自分が再体験してしまうんだよ。ここを見せると決めるまでに、何回クゥエルダイドとキスしたか……」
 女の感覚を味わうのは結構な体験だが、好みでない男にねっとり口内を探られるのは好きになれなかった。
「ふむ……」
 アルコーキルが、考え深げに唸った。
「信じがたかったが、精霊の保証を受けた物なのであれば信じないわけにもいくまい。しかし、これだけでは殺害にまで及ぶ根拠が足りないのではないかね?こう言ってしまっては何だが、一人の成人女性を一人の成人男性が少々強引だがものにした光景……と言っても差し支えないように見受けられるのだがな」
「そこは意見を異にするようですが」
 さらっとティトーは言うが、内心はいらついていた。
 自分の仲間を犯される映像と感覚を何度も見なければならなかった事が不愉快だったのもあるし、ジュリアスのためにと深花が己の恥を忍んで託してくれた記憶をそういう風に一蹴されたのも気に食わない。


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