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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・ラショルト-11

「ん……!」
「柔らけぇ……やっぱり美味いな、お前」
 キスを堪能したクゥエルダイドの唇は、顎から喉へと下っていく。
「やっ……!っあ!」
 鎖骨に唇をつけた後、クゥエルダイドは深花の顔を覗き込んだ。
 リステュルティカの木の根の効能が、現れ始めている。
 もう少し時間を置いた方が、自分だけでなく深花もこの状況を楽しめるようになるだろう。
「……うし。ちょっと説明してやろうか」
 クゥエルダイドは深花を抱き起こし、背後から抱き締めた。
 何故か、抵抗する気は起こらない。
「気絶する前に何があったか、覚えてるか?」
 うなじに鼻を埋められ、深花は小さく声を漏らした。
「何……」
 どこかぼんやり痺れた頭で、問われた事を思い返す。
「あぁ……ティレットが……ひゃっ!」
 乳房を掴まれ、体がびくりと震える。
「ティレット?」
「ん……」
 自宅の玄関ドアをノックされ、勤務の終わったティレットが来たのだと思ってドアを開けたらクゥエルダイドが立っていて……抵抗したが、気絶させられたのだ。
「あいつの事は、『具合が悪くなったから休みます』ってメモ書いて追っ払ったからな。心配はいらねえ」
 不気味に見えるまでに、クゥエルダイドの口調は優しい。
「そう……あぁん……!」
 腰を擦り付けられ、深花は体をくねらせる。
「あ……んん……」
 指先が、乳首を捉えた。
 甘い声に、クゥエルダイドは喉の奥で笑う。
「ここ……どこ……?」
 視線を巡らせれば、どこかの物置らしい事は分かる。
「どこだろうなぁ」
 肩にキスをしながら、クゥエルダイドは手を伸ばした。
 逃げる事に思考が及ばない深花を見てもはや抵抗はないと判断し、手足を拘束していたロープを解く。
「どこだっていいだろ?これから俺と、たあっぷり楽しむだけなんだからな」
「ん……」
 顔をこちらに向けさせて唇を重ねると、深花は全身をクゥエルダイドに預ける。
 舌を侵入させて絡め取れば、熱い舌を必死に伸ばして応えてきた。
 頭の痺れは靄となって、もはや何も考えられなくなってくる。
「ほんっとによく効くなぁ……信じらんねぇ」
 クゥエルダイドの視線は、少し離れた場所でゆらゆらと紫煙を吐き出す香炉へと向けられた。
 香炉の中で燃えている物は、リステュルティカの木の根。
 特殊な液体に漬け込んでから天日乾燥させ、また液体に漬け込み……数度の工程を繰り返して作られる、強力な媚香である。
 理性や思考を徐々に麻痺させてしまい、快感は鋭敏に伝わらせるのに痛覚は鈍らせてしまううえ、常習性はほぼない。
 体質が合わなくて一度嗅いだら即座に効果がぶり返す人間もいるらしいが、そんな人間はまずいない。
 特筆すべきはこの香り、男性側にはあまり効果がないのだ。
 今の二人のように落としたい女に嗅がせて抵抗する気を失わせ、じっくりお楽しみ……というのが主な使い道なのである。
「ね、触ってぇ……」
 鼻にかかった甘え声で、深花がねだる。
「おう、全身しゃぶり尽くしてやるさ……あいつらより俺がいいって、体に分からせてやるよ」
 クゥエルダイドは、手早く服を脱ぐと深花を毛布の上に押し倒した。
 時刻は夜。
 明かり取りの窓を塞ぐ木戸の隙間から漏れ入る光が、ぼんやりとしか見えなかった二人の姿をはっきりと映し出す。
 深花の頬は、赤みが差していた。
 白く滑らかな肌は光を受け、まるで発光するように輝いている。
 特に美醜を気にしていなかったその顔は、薄い夜明かりの下では実に妖しく色っぽい。


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