投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「ガイア」
【ファンタジー その他小説】

「ガイア」の最初へ 「ガイア」 2 「ガイア」 4 「ガイア」の最後へ

「ガイア」-3

 運んだ布団をテキパキ二人で敷く。
武流は普通に敷いてるだけなのだが、少年がそれに上手く合わしてくれて、スムーズに終わらすことができた。
「ところで名前は?」
「あ、私フィンです」
一人称を、私、と呼ぶ少年。
「色々ありがとうフィンさん…て、外国の人?」
「まぁ…そんなです」
少しだが、ちょっと砕けた言葉使いになってきたフィンは、笑顔でそう答えた。
フィンの変化に嬉しさを覚える武流。
そしてさらに声を楽しげにして話す。
「へぇ〜!日本人みたいだよね?言葉も凄い喋れるし!」
「はい、日本が好きでして…特にお寺とか昔の風習が」
「あー分かる分かる!俺もそういうの好き!」
フィンも堅さがとれ、整った顔立ちに似合った良い笑顔で武流と話す。
「私のほ…じゃなくて国は日本に非常に興味を持っていて」
「そうなんだ。ところで、国って何処なの」
「ーーー」
まただ。
少年がまた固まった。
さっきと違うのは、表情が笑顔という事だけ。
頬は引きつり、ピクピクと痙攣している。
「…え?」
やっとして搾り出したかのような声を上げるフィン。
「あ、いや、何処の国なの、か…」
フィンの顔を見て武流は驚き、思わず言葉を詰まらせてしまう。
フィンの顔は、一瞬のうちに汗だくになっていた。
それは止まらず、ダラダラダラダラ溢れてくる。なんだか、脂汗にも見えてきた。
「…い、言っても…分かんない…と、思います…よ?」
とぎれとぎれの言葉。
さらに上擦った声。
それは、信用させるだけの力がない。
しかし「本当に?」と聞けない、聞くことができない。
必死に何かを隠そうとしている少年に、誰が聞けるだろうか。
「そ、そっか。じゃあ、いいや…」
とにかく、気休めとしてそう言っておく。
それでも、フィンは安心した表情に変わる。
「(なんだろ…、日本に不法侵入?)」
武流は頭の中で、少年が何故突然慌て出すのか、それの様々な理由を考えていた。
「では、私はこれで」
「え?あ、はい」
フィンは少し足早に退室していった。
フィンが居なくなった後、しばらくの間武流は考え事をしていたが、一日歩き回って疲れた体が酷い睡魔を作り出す。
その力に逆らう事なく、武流は先ほど敷いた布団にもぐり込み、瞼を閉じた。
そして間もなく意識が堕ちた。

 …夜。
全てが闇に染まるこの時に、人は暗黒の意識の中へと堕ちる。
稀にそうでない者もいるが、大半の人はそうである。
武流も堕ちる者の一人だ。
街の喧騒も届かない、森の中にある宿の一室で孤独に夢を見る。

 ふと、不思議な感覚に襲われる。
頭が妙に冴え、眠気もなく、体が何か温かいモノに包まれている感覚。
「…目が醒めちゃったみたいだな」とすぐに判断できた。
瞼を開く。
そこから見る視界は不思議極まりなかった。
天井がやけに近い。
それと同時に、体が動かない事にも気付く。
「か、金縛り!?」
だが、声は出る。
妙に澄み切った頭で、冷静に自分の状況を把握すれば、どうやら、首から上は動かせるようだ。
そして、体を包む温かい感覚は、自分を取り巻いている不思議な文字列から発せられる、淡い紅色の光りが原因のようだ。
そして、一番理解するのに苦労したのが…。
…自分は浮いている。
コレだった。
「え?な、なんだコレ?」
しかし体を拘束する、見た事のない、光りを放つ文字列から逃れられない。
必死にもがくが、首だけでは何も変わらない。
武流はそれでも諦めなかった。
何か嫌な予感が…警鐘が心で、かつてないほどに鳴っていた。
「ーーー!?」
今、気付いた。
何故気が付かなかったのか。
何故この地に来てしまったのか。
あの…日常が壊れる感覚に襲われた時…故郷で起きた山火事の時に会った不思議な老人はこう言ったではないか!
「全てを知るにはな」と、言っていたではないか…!
その全ては真実の意。
それを確かめて来いと言っていたのではないのか…!?
この世に真実などない、この世自体には。
それを確かめる?
何故?
それは自分が思っていたこの世が偽りの世だからではないのか…!?


「ガイア」の最初へ 「ガイア」 2 「ガイア」 4 「ガイア」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前