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ZERO
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ZERO-5

【2】《蒼い空に浮かぶ島》

…彼女の話をどうやって信じろと言うのか……。
読者の方々には要約してお伝えしよう。
俺は本当に別の世界に飛ばされてしまったらしい…。
まず、この世界には陸という物がほとんど存在しない。本来の地球の表面はほぼすべて海に覆われているのだ。
今俺が立っている周囲4キロほどの地面は空を飛んでいるそうだ(!)。空飛ぶ地面は『島』と呼ばれていて、だいたい高度500〜3000メートルの辺りに浮かんでいるとのこと(ちなみにこの島は900メートル程だとか)。面積は一番大きいものでも四国くらいの大きさしかないのだそうだ。
そんなもんだから我々が考えるような国という概念は(今は)無く、それぞれの島が都市国家を形成している。それに今いるような小さな島には都市なんて物はないので、彼女のような無国籍の人もたくさんいる。
もちろん空を飛ぶ以外に移動手段はなく、我々が車や列車に乗るような感覚で飛行機や飛行船を使うのだ。
また、ほとんどの空域が無政府状態なので海賊ならぬ『空賊』が出るらしい。そのために武装した飛行機を使わざるを得ないのである。さっきの(1話参照)都さんのリアクションは、ゼロ戦がココでは庶民の足となっているためだったのだ。
「…何ぶつぶつ独り言いってんのよ」
「読者の方々に説明してたのさ」
「?…終わったら来てよね」
彼女…都さんとは結構うちとけてきた。随分気さくな性格で、田舎の人によく見られるように、俺のような見ず知らずの他人にもとても親切だ。今も一緒にパンの昼食をいただいた所である。
彼女はこの麦畑で今は一人で住んでいる。
両親は早くに飛行船の事故で亡くなった。飛行船は悪天候に弱い。事故は度々起こるのだそうだ。
彼女を育てたのはおじいさんで、そのおじいさんも1年程前に他界している。
彼女に飛行機の操縦を教えたのもおじいさんだ。ゼロ戦が二人乗りなのはこのせいなんだそうな。俺が着ていたツナギはおじいさんの物で、ずいぶん大きな背丈であったようだ。
今俺はそのツナギから、同じくおじいさんの物だった少し大きめの飛行服に着替えている。いまいち『空飛ぶ島』と言われてもピンとこない俺のために、都さんがゼロ戦で上から見せてやると言うのだ。
「ユウキー着替え終わったー?」
「あの〜、俺の名前は雄飛(ユウヒ)なんですけど…」
洗面所で着替えてた俺は居間を通って格納庫に出た。
ゴオオオォォォ……
ゼロ戦はエンジンもかかって準備万端整っている。
「燃料も満タンに入れたし…いつでも行けるわ」
「なんだか悪いねえ」
「遠慮はいらないよ。さあユウイチも乗った乗った!」
「雄飛です……」
そう言うと彼女は馴れたもんでサッとコックピットにおさまった。
その表情はとても輝いている。本当に飛ぶのが好きなようだ。


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