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ZERO
【ファンタジー その他小説】

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ZERO-18

「じゃあ、こちの話しようカ」
「へ?」
 突然、徳さんが話しかけてきた。
「へ?じゃないヨ。心当たりアルって言ったワタシ」
「あ…」
 すっかり忘れてた。初めに手がかりを示してくれたのは徳さんだった。
「じゃあ、案内するからチいてきテ」
 そう言うと、徳さんはやおら立ち上がって勘定を済ませる。
「どこ行くんすか?」
「ヒミツネ。都ちゃんは悪いけど、ここで待ってテちょ」
「なんでですか?」
「なして?」
 徳さんは、こちらを振り向いて一言。
「ヒミツネ…」

☆☆☆☆☆☆

 伊丹さんの店から市電で『北鉄(北都鉄道?)澄川駅』へ。そこから懐かしの(と言っても写真でしか見た事は無いが)チョコレート色の電車――所謂『ゲタ電』ってやつだ――にゆられて40分。
 着いたのは『神楽支那町駅』。北都の西側にあって、名前の通り駅前から中華街がひろがっている。
 徳さんは俺が駅前で突っ立ってる間に、どこかへ電話をして戻ってきた。
「で、そろそろ行き先を教えてくださいよ」
「まだネ。それと…はじめに言ておくけド、これから行くとこトそこて見た物は他人に言てはダメ。絶対。都ちゃんにもタヨ」
 …なんかヤバい流れだと俺の脳味噌が警告を出していたが、あえて無視した。帰るための手がかりはこれしか無いのだ。
「…解りました」
「じゃ、行こカ」
 徳さんが手を上げると、1台の黒塗りの車が音も無く滑り込んできた。
 助手席の男が徳さんと中国語(だと思う)で一、二言話をしてこちらを見た。目つきの悪い老人だ。
「さ、乗て」
 徳さんが後部座席のドアを開けて手招きする。俺が乗り込むと、すぐに徳さんも隣に乗ってドアを閉めた。
「詳しい場所、教えららないネ。タからちょとコレ着けて」
 取り出したのは黒いバンダナの様な物。俺がうなずくと、すぐに目隠しをされた。
 まもなく車が走り出し、右へ左へと細かく方向を変える。

 ところで……恥ずかしい話だが、俺はパイロットのくせに、船酔い車酔いの常習犯だ。自分でハンドルを握った時でさえ、長距離を走ると酔う。飛行機だと何故か酔わないが。
 まあ、ようするに今回も酔ったって事だ。俺の異変に気づいた徳さんは「大丈夫?」を連呼してた。 
 ……シリアスな展開が台無しである。駄目作者め。

 吐き気と格闘していたので、どれ位経ったか分からなくなったが、突然(目隠しされてるから全て突然だが)エンジンが止まってドアが開けられた。
 徳さんに手を引かれて歩きはじめると、やけに靴音が響く。おそらく地下の駐車場だ。
 やがて立ち止まると、床が上りはじめ(エレベーターだろう)、そこから降りると久しぶりに目の前が開けた。
 6畳ほどの窓の無い部屋に、裸電球と古ぼけた応接セットが一組。テーブルの上にはA4サイズの封筒が2つ置かれていて、サングラスをかけた小太りの男が座っている。
 さっきの運転手と老人は見当たらず、徳さんはサングラスの男の隣に座った。
「そこに掛けて下さい」
 サングラスの男はそう言って封筒の内の1つを左手で取り上げた。良く見ると、右手は肘から下が無い。
「これから写真を何枚か見ていただきます。…ああ、自己紹介がまだでしたね。私の事は『ロイ』と呼んで下さい。もちろん本名ではありませんが」
「雄飛サン。コレはテストでス。まだワタシ達あなたの話信用した訳じゃないでス」
 そりゃ今日初めて会ってから、まだ半日も経ってないのだから当たり前である。簡単にこんな所につれてくるあたり、意外と小物かもしれない。

 ……しかし、写真を見せられた瞬間にそんな考えは吹き飛んでしまった。

 その写真には、確かにこちらの世界には『あり得ない』特徴的なツインタワーが写っていた。

 …

 ……

 ………

 東京都庁と新宿の街並みが。


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