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ZERO
【ファンタジー その他小説】

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ZERO-15

【7】《北都?》
 
 なんとも不思議な光景だ。
 俺は今、路面電車に乗ってるのだが、車窓の景観はまさしく大正から昭和初期の街だ。アスファルトと石畳の通りに木造の長屋が連なり、重厚な赤レンガ造りの銀行があったりする。
 しかし、決して古い町並がわざわざ残されている訳ではない。さっき見えたレンガ造りの建物は真新しいし、建設中の土蔵や商店もある。俺が乗ってる市電だって木造のレトロな感じだが『2001年製造』のシリアルナンバーが付いていた。
 
 それに輪を掛けておかしいのが人々の服装だ。ハイカラよろしくな格好をしているなら少しは納得できるのだが、至って普通なのである。
 ―――読んで字のごとし。全く『普通』。
 スーツ姿のOLやビジネスマンもいれば、ブレザーを着た学生や、キャミソールの女の子だっている。まるで映画のセット村にいるような違和感だ。
 
 それから、さっきの『2001年製造』のナンバーもおかしい。まさかこっちの世界にもキリストがいたとは到底思えない。
 ゼロ戦だってそうだ。正式名称は零式艦上戦闘機と言うのだが、その『零式』は『皇紀』という最初の天皇が即位したとされる年を紀元とした戦前の日本独自の年号(ちょうど皇紀2600年に制式採用されたから『零式』)からきているのだ。その呼び名がこの世界でも使われてるのは明らかに変である。
 
 間違いなくこの世界はどこかで元の世界と繋がっているはずだ。
 そのどこかが判らないのだが……。
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 
 空港から7つ目の停留所で市電を下りた。そこはちょうど東京の銀座の様な所で、5〜8階建てのビルが建ち並ぶ北都の中心街だ。
 
「なに難しい顔してんのさ?」
「えっ?…あぁ、ちょっと考え事をね」
 きっとさっきの考えは都に説明しても分からないだろう。それより、どうも俺には物思いにふけってると険しい顔になる癖があるみたいだ。
 
「ここよ」
 ……着いたのはいかにも怪しい店―――『CAFE&PUBRESTAURANT SKYKID』……おそらく『PUB』がメインで後はおまけだろう。
 かなりガタがきてるドアを開けると先客がカウンターに3人ほど。ランチタイムでこれじゃあ経営の方もガタがきてそうだ。
「あれっ?伊丹さんじゃないですか!?」
 伊丹さんがいたのだが、客としてではなくマスターみたいな格好をしてる……。
「ここは伊丹さんの店なのよ」
「……俺の記憶違いじゃなければ、確かパイロットのはずでしたよね……」
「まあ、ちゃんと自己紹介してなかったからな。名前は憲治郎(ケンジロウ)で歳は51だ。メシ屋時々パイロットみたいな感じだな」
 時々パイロットって……。
「腹減ってるだろう?今用意するよ」
 そう言って俺が混乱してるうちに厨房の方に行ってしまった……。
 
「都が男連れってのは珍しいな。こっちで話し聞かせてくれや」
 客の1人が手招きしてる。
「都さんの知り合い?」
「そうよ。それじゃ紹介するわ。彼は横田 翼(ヨコタツバサ)。その隣の人が徳(タク)さんで、彼女が成田 仁美(ナリタヒトミ)。3人とも賞金稼ぎよ」
「どうも。俺は羽田雄飛です…」
 
 横田の歳は俺より下ぐらいか。逆立ちした茶髪と精悍な顔立ちで、いわゆるジャニーズ系ってやつだ。
「え〜と、徳さんの下の名前は……」
「ひみつネ」
「へっ?」
 …徳さんは年齢不詳。たぶん30強ぐらいだと思うが確信はもてない。細長くて人懐っこい目がキツネを思わせる。
 成田さんはもっと判らない。クールというか冷たい感じの美人で、俺の事には興味なさげに真っ昼間からグラスを傾けてる。
 
「それで、都とはどうゆう関係なんだ?」
 横田のほうは興味深々ってな顔だ。
 どうせ信じちゃくれないだろうがな………。
 


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