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熱帯夜
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それから-3

「まだみんなグラウンドで練習してる」
「みたいだな」
「補習は?」
「終わった」
「帰るの?」
「帰るよ」
「じゃあ俺も帰ろ」
「お前は練習参加しなくていいのかよ」
「秀徳が行かないなら行かない」

女子か!
もしくはおれの彼女か!
行けよ、一人で。

「秀徳さぁ、最近元気なくね?」
「あ?」
「浴衣のお姉さんにフラれたんだろ」
「…」
「当たり?」

デリカシーのない奴め。
静かに睨んで、また下を向いて歩き出す。

吉村は祭の時に俺とみのりさんが一緒にいるのを見かけて話し掛けてきた張本人だ。
新しい彼女がどうこうと、でっかい声で聞いてきた迷惑な奴。

「へこんでんの?」
「うるさい」
「元気出せよ」
「…」

心配はしてくれるから、多分いい奴なんだよな。
追い払おうとした手を引っ込めた。

「秀徳、あの子覚えてる?」
「あの子?」
「祭の時、俺達と一緒にいた女子」

祭の時?
そーいやいつものメンバーの中に見慣れない子がいたな。でも、

「顔まで覚えてない」
「だろうな」

浴衣姿のみのりさんしか覚えてないよ。

「あの子、うちの部活の後輩なんだけどさ」
「うん」
「お前と付き合いたいって」
「へー」
「どうする?」
「断る」
「早っ」
「後輩だろ?」
「あぁ」
「年下じゃん」
「そりゃな」
「断る」
「なんで」
「なんでって…」
「だってお前、来るもの拒まず去るもの追わずじゃん」
「…」

そうか。
俺ってそーゆう感じだったっけ。
いい加減で適当で、真面目なみのりさんはきっと嫌いなタイプだ。

「とにかく、断っといて」
「もったいな。可愛い子だぞ?」
「俺、年上が好きなの」
「お姉さんに甘えたいとか?」
「いや、お姉さんを叱りたい」
「それ何のプレイだよ」
「うるさい」

みのりさんは甘えさせるタイプじゃないよな。
しっかりしてるようだけど、実際危なっかしいし。
年上のくせに年下みたいで。
綺麗なのに可愛いくて。
笑った方がいいのに泣いてばっかいて――…

思い出そうとしても浮かぶのは泣き顔ばっか。
いつも泣いてた。
笑ってほしかったのに。


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