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悪魔、襲来
【ファンタジー その他小説】

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悪魔、襲来-3

 死ぬ…私が、死ぬ?
 さまざまな想い出が走馬灯のようにケインの脳裏をよぎっていく。
 父、エルリッヒ、マルスを始めとする同級生達、リグ…
 様々な人を思い出すたびケインの心を諦観に似たような落ち着きが満たしていく。
 オマケにどこかから水の雫が垂れたような音が聞こえた…ような気までしてきた。幻聴まで聞こえてくれば現実逃避も大したものである。
 そして、最後に浮かんだのは…
「どうしました、坊ちゃま?あなたのお力は所詮そこまでのものに過ぎませんのかな?」
 …セバス。
「その程度でナイスガイを気取るとは片腹いとうございますな、フハハハ、フハハハハハハハハハハハ………」
 木霊のように哄笑がケインの脳裏に反響する。これが彼を生に引き戻した。
「なにがおかしい…」
 ぽつり、とケインの口から小さな呟きが洩れる。
「ん?どしたの、ケインちゃん?」
 ぐったりした彼を案じたリグの心配げな声が掛けられるも、ケインは応えない。
「なぁにがおかしぃい!貴様のせいでベッドは吹っ飛び、部屋はぶち抜かれ、私はこんなところで空中ダイビングだっ!!貴様に笑われる筋合いはなぁいっ!許さん……貴様は私がたぁたきつぶしてやるぅっ!!!」
 その時。ケインの目がかっと見開かれた。
 怒りに目が真っ赤に燃えている。
「おお〜、これこそまさしく怒りのスーパーモード…」
 感心しているリグにケインは熱く燃える瞳のまま語りかける。
「リグっ!これ以上はまずい」
 1000フィートを切った時点でパラシュートが開かれていなければその後は間にあわないのだ。確かにもうあまり時間は残されていない。リグのパラシュートに備え付けられている高度計はすでに2000フィートをぶっちぎっていた。
「もう一度、今度で決めるぞ!!」
「う、うん。それじゃあ、いっくよ〜☆」
 渾身の力を込めて輪を握ったままジャンプするリグ。
 だが…
「あぁっ!!」
 度重なるジャンプで手が疲れていたのか、それとも汗のせいか。
 ゴムが伸びたその時、リグの手が滑って離れた…

―――地上墜落まであと1300フィート。


「きゃぁああああああああああああっ」
「危ないっ!」
 何かが引き千切れるような音と共にケインが渾身の力で身を乗り出す。
 二人が完全に離れる前に、リグの華奢な腕を捉えることに成功した。ケインの反対側の腕はその衝撃によって傷つき、血がじんわりと服に染み出してきている。
「あっ…あり…がとぅ」
「例を言うのはこちらだ。さあ、時間が無い。ちょっと失礼」
 そのまま近寄せ、自分の身体に彼女がしがみついたのを確認するとケインは自由な腕でぐっと抱き寄せる。
「あっ…」
 小さな声を上げてリグが俯く。
 心なしか、顔が赤い。
「しっかり私につかまれ。これから索を引いてパラシュートを開く」
「うっ……うん」
「よし、ではいくぞ」
 ぎゅっと抱きついたのを確認すると、力一杯ケインはパラシュートの輪をひっぱった。
 期待に違わず、ぼふっという大きな音と共に真っ赤なパラシュートが開く。
「ふぅっ…」
 ようやく訪れた安息にケインが大きく吐息を吐いた。
「ねぇ、ケインちゃん…」
 珍しくおずおずとしたリグの物言い。
「…ん?どうした?」
「もしかして…ボク、迷惑だった?怒ってる…よね」
 …さすがにケインの腕(と顔)の状況を見て悪いと思ったのか、目に涙を滲ませて見上げている。
 それを見たケインは鼻の頭をぽりぽり掻いて小さく溜め息を吐いた。
「…いいや、怒ってないよ。いつもの事だしな」
 そこでにこっと笑ってやる。
 そう、いつもの事だ。
「…うんっ、ありがとうケインちゃんっ!」
 リグの抱きしめる腕に力が篭る。
「お、おい。暴れるな」
「てへへっ☆ケインちゃんっていつも優しいよねっ」
「…そうか?」
「うん」
 だから、大好き。
 リグはその先を心の中で呟く。
 変わりに
「お礼にボク、頑張ってお料理を作るよっ」
 途端にケインの顔が恐怖に歪み、髪よりも青ざめさせた。
 彼の苦労は、いまだ尽きる事は無い。
 まずは様々な損害保証が彼を待っている。


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