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夢幻の杜
【ファンタジー 官能小説】

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夢幻の杜-2

眩しい。
閉じた瞼の裏側に、溢れんばかりの光の粒子。
(…………)
眠い――が、しかし!
パチッ
微かに感じるけだるさの中で、重力に逆らい二重の瞳をこじ開けた。
そして。

「…どこ、ここ?」
仰向けで倒れていた姿勢から身体を起こし、思わず呟いてはみるものの、受け止めてくれる相手はいないようだ。
やがて、ゆっくりと活動を再開した脳みそが、今、置かれている現実を理解し始める。
(――そうだ、私…)
落ちたんだ。
王宮のメイン階段の最上段から。
それも、理不尽な結婚話に腹を立て、怒りにまかせて手すりを滑り降りようとして。
…王女がやることじゃないっつの…。
おまけに、勢い余って手すりを飛び越し大失敗。
お父様にもあれほど悪態ついて飛び出したっていうのに、情けないったら。
…でも。
「痛くないんだ…どこも」
不思議なことに、あの高さから落ちた割には、どうやら私は無傷らしい。
猿姫だろうと女は女。
とりあえずは一安心かなっと……え??
「―――ええぇっ!?」
…す、透けてるんです…けど…私の身体。
「な、なにこれ?」
掌の向こうに輝く太陽。
あぁ、チョウチョも私の身体通り抜けちゃってるよ。
…ということは。
まさか――死…?
「いやいやいやいや」
悪いことは考えないようにしよう。
そうだ!
これは夢なんだ。
だって、始めて来た場所だもの。
うっすらと白く霧に煙る、湖のほとり。
辺りは、どうやら色濃い緑に囲まれた森のようだ。
生まれ育ったこの国に、このような場所なんてないはずだもの。
でも。
「…きれいなところね〜」
まずは、動き出さなきゃ何もわからないか。
人間の本能なのか、とりあえず私は立ち上がり、湖の対岸に視線を送ってみた。

「―――あっ!?」
何か、いる。
あれ…人だ!!
間違いないよ。
王女としては落ちこぼれの私だけど、狩人か兵士だったらトップクラスなほどに視力はいいんだから。
「あぁ、待って!」
そうこうしているうちに、その人影は馬にまたがり移動を開始してしまった。
…どうしよう。
後追って、声掛けるべき?

「――えぇーい!待〜てぇ〜〜い!ここで会ったが百年目〜っ!!」
走り出し、小さく遠ざかるその人影の後を全力で追いかけながら。
…確実に、呼び止めるセリフを間違えたわ…。



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