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熱帯夜
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三日目-4

翌日、土曜日。
暑さと考え事のせいで寝られなくて、今朝は久し振りに朝寝坊した。

今日も暑そう…
でも天気はいいみたい。明日もこうだといいんだけど。
時計代わりの携帯で時間を確認して――…

「あっ」

ディスプレイには『未読メールあり』と表記されている。
慌ててメールボックスを開いた。

彼からだ!
昨日夜に電話かけたから――…

『夜に電話しないでって前に言ったよね?』

「…」

件名もなければ絵文字もない、シンプルな一言だった。

彼の言う通り、付き合い始めた頃から夜に電話をしないでほしいって言われていた。
仕事が忙しいから、睡眠だけは妨害されたくないんだとか。

『ごめんなさい。声が聞きたかったから』

ただそれだけ。
困らせるつもりも怒らせるつもりもない。

『約束は守ってほしい』

「…」

約束?
自分はあたしとの約束を破ってばっかなのに、声を聞きたくなったのだって元はといえば昨日のデートを中断されたからで…
沸き上がるイライラとは対照的に、あたしが打ち出したメールの文章は

『ごめんなさい』

一言。
言い訳なんかしてもしょうがない。謝らなきゃ、自分の非を認めなきゃ嫌われちゃう。

好きだから我慢する。
好きだからこれが正解。
あたしは間違ってない。

『分かればいいよ。明日17:00に待ってるから』

ほら、間違ってない。
花火大会の事もちゃんと覚えていてくれてるもん。

『楽しみにしてるね』

送信して、パタンと携帯を閉じた。
壁に掛けられた浴衣がもうすぐ着られる。
嬉しい…
うん、嬉しい。
嬉しい!


その日の夜は窓を開けるのをやめた。秀君と話すという行為が彼に悪い気がして。
会社で男性社員と会話する時は何とも思わないのに、秀君が相手だと変な罪悪感が生まれる。
その正体が何なのかは自分でもうまく説明できないんだけど。



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