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ドラゴンクエスト5 天空の花嫁
【二次創作 官能小説】

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ラインハット編 その五 ドーナッツ-8

「ふふ、覚えておらぬも仕方あるまい……。さすがにワシも老いたからな……」
「貴様は俺が生まれた頃から妖怪だろう?」
「黙らっしゃい。……そうじゃな。あのキラーパンサーは元気かな?」
「キラーパンサー……。ああ、貴方はあの時の……」
 ようやく思い出したリョカの表情は複雑だった。三年前、パパスをラインハット国に召集した官僚こそ、このケイン老なのだから。
「今更謝ったところでしょうのないことだが……、この老いぼれ、貴殿の父とは先代の王と等しく親しくさせて頂いたものだ……」
 がっくりと肩を落とすケイン老は床にひれ伏し、深く頭を垂れる。
「や、辞めてください。そんなことされても僕は……」
 だからといって彼を責めるつもりもない。ヘンリーの話が正しければ彼もまた欺かれた者なのだ。
「ワシはパパス殿がデールを殺めたなどと信じはしない。あの女狐こそが黒幕なのだからな……」
 リョカに促され立ち上がるケイン老。リョカには父の名誉を信じてくれる人がいるだけでも心強かった。
「おいボケ老人。誰が聞いているのか解らんのだ。おいそれと軽口を叩くな」
「ふふ、弟子に尻を叩かれるとはワシもモウロクしたものじゃわい。だが、リョカと申したな。もし、ワシにできることがあったら何でも言ってほしい。お主の父に対する不義理を拭いたい」
「僕は、別に……。父の無念を晴らせればそれで……」
 もし母の行方を知っているのならそれを……。リョカはそれを口ごもり、言葉を濁した。

**――**

 日に日に薄まる勝利の余韻。代わりに高まるアルミナへの不満。そして沸き起こるヘンリー王子凱旋の噂。最近ではアルベルトこそがヘンリーなのではないかと噂されていた。
 その理由の一つが、兜から見える特異な緑の髪。ラインハット地方でこそ珍しくない髪質なのだが、彼の出自はアルパカ方面。何か裏があると嘯かれるのは時間の問題。
 パパスに誘拐された王子はサンタローズからアルパカに連れ去られ、そこで折を見て脱出した。その後は苦難の日々を経て、祖国の危機に参上した。
 まさに英雄譚に相応しい展開に、街ではいたるところでそんな噂が飛び交った。
 それらを操るのは当然アルベルト・アインスであり、彼は機会を待っていた。

「街では貴方の噂で持ちきりよ? アルベルト……」
 ラインハット国兵舎に用意させた一室で、アルベルトは安楽椅子を軋ませながらエマの報告を聞いていた。
「複雑な気分です。貴方と情報戦で敗北を喫したブランカ国の私が、まさに同じことをして貴方を助けるのですから……」
 二種類のポットを用意して紅茶を淹れるオットー。爽やかなハーブの香りのするものをアルベルトとエマに、リョカと自分には独特の臭いのする紅茶を注ぐ。
「ありがとうございます。バニアティなんて久しぶりです……」
 そうは言うものの、リョカはあまり嬉しそうではない。懐かしさと嗜好は別にあるというわけだ。
「失礼、リョカさんはグランバニアの出自と思いまして……」
 オットーは急いで別のカップを温め、やや濃くなったハーブティを注ぐ。
「え? なんでわかるんです?」
 香りが良く、すっきりする喉越しを堪能しつつ、リョカはふと驚く。
「お名前を聞けば、ある程度は……」
 さも当然のように言うオットー。
「僕はそういうのあまり詳しくなくて、名前で出身とかわかるんですね」
 幼い頃父と共に旅暮らしであったリョカが、大陸によって変わる名前の韻に疎くなるのは当然だろう。会う人、会う人で皆個性的な名前を持っている程度にしか思わなかった。


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