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憧れの貴女
【理想の恋愛 恋愛小説】

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憧れの貴女-1

出会いは12年前の春。オレは小学校の卒業式以来、はじめて学ランに袖を通していた。同じ服装をした男子、セーラー服を来た女子に囲まれて座っていた。
校長先生などお偉いさんのあいさつのあと、先生が登壇して先生紹介のときにその人はいた。
第一印象は「小さい人だな」ってぐらいだった。でもその先生の授業や学校生活を通じて、先生の気配りや優しさ、ときに厳しさにふれた。当時、同級生に好きな人がいたけど、今思えば、当時から憧れがあったのかもしれない。

再会したのは2年半前の正月。22才になっていたオレは、中学の同窓会を計画し、となりのクラスの担任だった、その先生も招待した。
35才になっていたその童顔の先生はほかの女子を含めても、一番かわいく、凛として見えた。
そのときから、オレの中で「先生」は「一人の女性」になった。
3日後、「あこちゃん」(中学時代、みんなにそう呼ばれていた)に電話でデートを申し込んだら、

「いいよ」

って言ってくれた。それから、一方的なオレの片思いが始まった。
地元から離れた大学院に通うオレと、教師・事務仕事・部活の顧問と多忙なあこちゃん。たまのメールと、月1回ぐらいの長電話と、年3回のオレの長期休暇の時のデート。そんな感じでこの3月までは過ごしていた。
その間わかったことは、あこちゃんはウラオモテのない人だということ。すごく聡明で賢明で頑張りやさんだということ。あこちゃんと居ると安らげるということ。あこちゃんになら何でも話せるということ。あこちゃんを知れば知るほど好きになっていたということ。
…そして、長年片思いしている人がいるということだった。

こわかった。
オレは一歩踏み出せずにいる自分がいる。あこちゃんは人間的にもすごく頼りになる人生の先輩であり、あこちゃんもオレに仕事のグチなどを言ってくれたりする。あこちゃんとオレは、男女関係のない情でつながっている(と勝手に思っているのかも)。このままの関係でいいんじゃないか。これ以上を望んで、関係が崩れるのではないかと。それがこわかった。

しかし、オレは決めた。やっぱりあこちゃんにもオレのことを好きになってほしい。

3月、無事大学院を卒業し、あこちゃんのわずかな春休み(新入生の迎え入れの準備やクラス編成などで忙しいらしい)に会って、ドライブして高台に車を止めておしゃべりしていたときにオレは言った。

「清水明子さん。僕とお付き合いしてください」


あこちゃんは2年半前と同じように

「いいよ」

と言った。


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